ノッチフィルタ(Notch Filter)とは、特定の振動周波数だけを狙って減衰させるためのフィルタで、サーボモータやロボットの共振振動の抑制に多用されます。
サーボのゲイン調整と並んで必須の制御パラメータであり、設備の高精度化・高速化に欠かせません。
この記事では、ノッチフィルタの仕組み、設定方法、使いどころ、注意点まで初心者にもわかりやすく解説します。
ノッチフィルタとは?
ノッチフィルタとは、ある特定の周波数だけをピンポイントで弱める(減衰させる)フィルタのことです。
サーボモータで起きる共振・異音・発振などの振動問題を抑制する目的で使用されます。
ノッチフィルタが必要になるケース
- サーボモータが「ビーン」という高周波振動を発する
- 軸が共鳴して制御が不安定になる
- 機械構造が持つ固有振動数が特定の周波数に存在
- ゲインアップするとすぐ発振する
機械構造の固有振動数は必ず存在するため、ノッチフィルタの設定はサーボ調整の基本です。
ノッチフィルタの仕組み
ノッチフィルタは、以下の2つの要素で構成されています。
① 中心周波数(Notch Frequency)
削りたい振動周波数(Hz)。
例:120Hzの共振 → 中心周波数120Hzに設定。
② 減衰幅(Bandwidth)
どれくらいの幅を弱めるか。
幅を広げるほど効果は大きくなるが、応答性が低下する。
③ 減衰量(Depth)
どれだけ弱めるか。通常は固定値か自動設定。
サーボメーカーの多くは、これらを「ノッチ1」「ノッチ2」「ノッチ3」と複数設定できる仕様です。
ノッチフィルタの設定方法(実務)
① 振動周波数を特定する
方法は3つ:
- サーボの「周波数解析」機能
- FFT分析装置
- 異音から推定(経験的手法)
最近のサーボは自動解析機能を持ち、固有振動数を自動検出できます。
② 中心周波数を設定
特定した振動周波数をノッチ中心へ入力。
③ バンド幅を微調整
- 狭くすると応答性が良くなるが効果が弱い
- 広くすると効果は大きいが応答性が悪化
④ ゲイン調整と合わせて最適化
ノッチだけでは完全に振動が消えないことが多く、比例ゲイン(P)・積分ゲイン(I)と合わせて調整します。
ノッチフィルタ使用時の注意点
① むやみに幅を広げない
制御応答が悪くなり、過度に抑制される。
② 複数設定すると応答遅れが大きくなる
ノッチの入れすぎは逆効果。
③ 原因が機械側にある場合は根本対策が必要
- 構造補強
- 剛性アップ
- 取り付け位置の見直し
④ 共振点は装置ごとに異なる
同じ型式の機械でも共振周波数は違うため、個別調整が必要。
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まとめ
ノッチフィルタは、サーボモータや装置の共振を抑えるための重要な振動対策です。
- 特定の周波数だけを狙い撃ちで減衰
- 共振や異音を効果的に抑える
- ゲイン調整と併用することで最適化
- 幅を広げすぎると応答が悪化するので注意
装置の高速化・高精度化には欠かせない設定項目です。












