オーバーハング量(Overhang Length)とは、**軸受(ベアリング)の支持点から外側へ突き出しているシャフト長さ**のことです。
回転体の設計では非常に重要な指標で、振れ・曲げ応力・寿命・振動などに直接影響します。
この記事では、オーバーハング量の意味、計算、問題点、適正値の考え方をわかりやすく解説します。
オーバーハング量とは?
オーバーハング量とは、
軸受中心から先端(負荷がかかる位置)までの距離
を指します。
一般にはシャフトの「突き出し量」とも呼ばれ、シール部品、カップリング、プーリ、ギアなどが軸端に装着される場合に問題になりやすい項目です。
オーバーハング量が大きいと何が問題?
① 曲げ応力が増える
突出量が2倍 → 曲げモーメントは2倍以上になる。
軸がたわみやすくなり、破損リスクが高まる。
② ベアリング寿命が短くなる
荷重中心が支持点から離れるほど、ベアリング内の負荷が偏る。
③ 振れ(ランアウト)が増える
工具や回転体の精度に大きな影響。
④ 異常振動の原因になる
偏荷重・共振を誘発し、騒音が発生する。
⑤ カップリング・プーリの芯ズレが悪化
アライメント調整が難しくなる。
オーバーハング量の基本計算式
曲げモーメント M は以下の式で求められる:
M = F × L
- F:負荷(N)
- L:オーバーハング量(m)
突出量が長いと、同じ荷重でも曲げモーメントが大きくなるため、軸径設計の重要指標となる。
オーバーハングによるたわみ量の目安
シャフトのたわみは以下のように増加する:
- たわみ量 δ ∝ L³(長さの3乗に比例)
突出量が少し増えただけでも、たわみは急増します。
オーバーハング量を最小化する方法
① 軸受を外側へ移動する
支持点を荷重中心に近づける。
② 突き出しを短くする
プーリ・カップリング位置を見直す。
③ 軸径を太くする
曲げ剛性を向上。
④ 軽量部品に変更する
回転体の質量を減らして負荷を低減。
⑤ アライメント精度を改善する
偏荷重が減り、たわみが発生しにくくなる。
オーバーハング量が関係する部品例
- プーリ・スプロケット
- カップリング
- ファン・ブレード
- ドリルチャック
- グラインダー砥石
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まとめ
オーバーハング量は、シャフト突出量を示す重要な設計項目であり、回転体の安全性・寿命・精度に大きく影響します。
- 短いほど振動・曲げ応力が低減する
- Lが少し増えるだけでたわみは急増
- 軸受寿命にも大きく関係
- 設計段階での最適化が最重要
突出量管理は安全で高寿命な回転体設計の基本です。












