PLC(Programmable Logic Controller/プログラマブルロジックコントローラ)は、工場の自動機や生産ラインを制御するための「産業用コンピュータ」です。
リレー制御盤を置き換える形で普及し、今では装置・ライン・設備制御のほとんどにPLCが使われています。
この記事では、PLCの役割・基本構造・ラダー図の考え方・入出力(I/O)のイメージを、初めての方にもわかりやすく解説します。
PLCとは?
PLCは、工場設備のセンサ・スイッチからの信号を読み取り、プログラムにもとづいてモーター・シリンダ・ランプなどを制御する装置です。
役割を一言でまとめると、「現場のON/OFF信号をまとめて判断し、装置を自動で動かす“頭脳”」です。
代表的な機能:
- センサ(近接スイッチ・フォトセンサなど)の信号を入力
- タイマ・カウンタ・比較などのロジック処理
- モーター・ソレノイド・表示灯などの出力制御
- 異常発生時のインターロック・警報出力
PLCの基本構成
一般的なPLCは次のような構成要素で成り立ちます。
- CPUユニット: プログラム実行、演算、内部データ管理
- 電源ユニット: PLC全体への電源供給
- 入力ユニット(I): センサ・スイッチからの信号を取り込む
- 出力ユニット(O): リレー・トランジスタ等で負荷側を制御
- 通信ユニット: 上位PC・タッチパネル・他PLCとの通信
小規模装置向けの“オールインワンPLC”では、電源・CPU・I/Oが一体になったコンパクトな機種も多く使われます。
I/O(入力・出力)の基本イメージ
PLCの入出力は、よく「I/O点数」で表現されます。
- 入力:センサ・スイッチの信号(例:X0, X1, X2…)
- 出力:ランプ・リレー・ソレノイドなどの駆動(例:Y0, Y1, Y2…)
例:
- スタートボタン(入力)ON → モーター(出力)ON
- リミットスイッチ(入力)ON → シリンダ停止と次工程へ移行
実際のプログラムでは、これらの信号をラダー図で記述します。
ラダー図(ラダープログラム)とは?
ラダー図は、もともとリレー回路図を模したPLC用のプログラム表現です。
特徴:
- 左側が電源、右側が出力コイルを表す
- 接点(X, 内部リレー)は“縦線の間に並ぶ”形で描く
- 「条件が成立したらコイルをON」というルールで考える
イメージ(文章化):
- スタートボタンX0 と安全スイッチX1 がONなら、モーター出力Y0をON
- 停止ボタンX2がONになったら、Y0をOFF
これをラダー図で表現することで、電気系の人にも理解しやすい論理回路になります。
PLCがリレー制御盤より優れている点
昔はリレーとタイマリレーだけで制御盤を構成することが一般的でしたが、現在は多くがPLCに置き換わっています。
PLCのメリット:
- 配線がシンプル: リレー点数が減り、盤内がすっきりする
- 仕様変更が容易: 配線を変えなくても、プログラム書き換えで対応可能
- 自己診断機能: エラーコードや内部フラグで異常箇所を特定しやすい
- 拡張性: I/O点数や通信機能を後から追加しやすい
PLCで扱う代表的な機能ブロック
ラダー図のプログラム内では、次のような基本機能が多用されます。
- 基本論理: AND(かつ)、OR(または)、NOT(否定)
- タイマ: ONディレイ、OFFディレイ、パルスタイマなど
- カウンタ: 製品個数カウント、通過回数カウント
- 比較命令: アナログ値(温度・圧力・電流)との大小比較
- 内部リレー: 中間条件を保持する内部フラグ
これらを組み合わせることで、複雑なシーケンス制御をシンプルに表現できます。
PLCの選定ポイント
- I/O点数: 現状+将来拡張を見込んだ入力・出力点数
- 電源電圧: AC100V/AC200V/DC24Vなど
- 通信方式: Ethernet、RS-485、フィールドネットワーク(CC-Link、PROFIBUSなど)
- 使用環境: 温度・湿度・ノイズ・振動
- メーカー: 既存設備との互換性、保守部品の入手性
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まとめ
PLCは、工場設備の自動運転・安全制御・省力化を支える中枢装置です。
- センサ入力と出力機器をラダー図のプログラムでつなぐことで、自動シーケンスを実現する
- リレー盤より配線がシンプルで、仕様変更にも柔軟に対応できる
- I/O点数・通信方式・環境条件を考慮してPLCを選定することが重要
PLCとラダー図の基礎を押さえることで、装置トラブルの原因究明や仕様検討がスムーズになり、電気・制御担当とのコミュニケーションも格段に取りやすくなります。












