サーボゲイン(Servo Gain)とは、サーボモータ制御において、指令値と実際の動作のずれ(偏差)をどれだけ強く補正するかを示すパラメータです。
ゲイン調整は、ロボット・搬送装置・位置決め機構の性能を左右する「必須のチューニング項目」です。
この記事では、サーボゲインの種類、動作の変化、調整のコツを初心者でも理解できるように解説します。
サーボゲインとは?
サーボゲインとは、サーボモータが「位置ずれ・速度ずれ」をどれだけ強く補正するかを決めるパラメータです。
ゲイン = 補正の強さ
→ 高いほどキビキビ動く
→ 低いほどゆったり動く
サーボ制御は基本的にPID制御で構成されます。
Pゲイン(比例)
ズレに比例して補正する力。
Iゲイン(積分)
ズレが残らないように累積で補正する。
Dゲイン(微分)
動きの変化を減衰させ、オーバーシュートを抑える。
ゲインが高いとどうなる?
メリット:
- 追従性が高い
- 位置決め時間が短い
- レスポンスが向上
デメリット:
- 振動しやすい
- オーバーシュートが増える
- 異音や発熱の原因になる
ゲインが低いとどうなる?
メリット:
- 動作が安定しやすい
- 振動や共振が少ない
デメリット:
- 反応が鈍くなる
- 位置決め時間が長くなる
サーボゲインの種類(代表的)
① 位置ゲイン(Position Gain)
位置のズレをどのくらい強く補正するか。
→ 高いほど位置決めが速くなる。
② 速度ゲイン(Velocity Gain)
速度のズレをどれだけ強く補正するか。
→ 動きの滑らかさに影響。
③ フィードフォワードゲイン(FF)
指令値の変化に先回りして補正する。
→ 高速・高精度の装置で重要。
実務でのゲイン調整の手順
① 速度ゲインから上げる(基本)
・動作を見ながら少しずつ上げていく
・振動が出たら下げる
② 次に位置ゲインを上げる
・位置決め時間が短くなる
・ただし振動が出やすい
③ 微調整で微分ゲインを追加
・オーバーシュートを抑える
・過剰に入れるとノイズが増える
④ フィードフォワードで仕上げる
・高速応答のラインでは重要
サーボゲインが合っていないと起きる症状
- ビビり音・異音(高すぎ)
- ガタつき(低すぎ)
- オーバーシュート(Pゲイン過剰)
- 立ち上がりが遅い(ゲイン不足)
- 発熱増加(高すぎ)
用途別の推奨傾向
| 用途 | 推奨ゲイン傾向 |
|---|---|
| 搬送装置 | 中〜やや高め |
| 精密位置決め(半導体・検査) | 高め+FF調整 |
| アームロボット | 中程度(安定性重視) |
| 重負荷の押し付け制御 | 低め |
関連記事
関連書籍
まとめ
サーボゲインは、サーボモータの動作を決める最重要パラメータです。
- ゲイン=補正の強さ
- 高いと速く反応、低いと安定する
- 速度→位置→微分→FFの順に調整
- 振動・発熱・遅れはゲイン不適合のサイン
正しいゲイン設定により、速度・精度・安定性を最大限に引き出すことができます。












