シャフト(軸)の曲げ応力とは、**軸に外力が加わったとき、その力によって軸内部に発生する「曲げ方向の応力」**のことです。
回転軸・駆動軸・モータ軸など、あらゆる機械要素で必ず考慮すべき重要な設計パラメータです。
この記事では、曲げ応力の意味、計算方法、オーバーハングや偏心との関係、許容応力の考え方をわかりやすく整理します。
シャフトの曲げ応力とは?
シャフトの曲げ応力(Bending Stress)とは、
荷重による曲げモーメントが軸内部に生じるとき、その断面に発生する応力
のことです。
応力は軸の外周ほど大きくなり、曲げ破損や疲労破壊につながる危険があります。
曲げ応力の基本計算式
一般的な丸軸では、以下を用います。
σ = M / Z
- σ:曲げ応力(MPa)
- M:曲げモーメント(N・mm)
- Z:断面係数(mm³)= πd³/32
軸径 d が少し変わるだけで曲げ応力は大きく変動します。
曲げモーメント M の求め方
M = F × L
- F:荷重(N)
- L:支点から荷重点までの距離(mm)
オーバーハング量が大きいほど L が増え、曲げモーメントも増加します。
シャフトの曲げ応力が問題となるケース
- プーリ・スプロケットを軸端に取り付けるとき
- オーバーハングが大きい回転体
- 偏心荷重が発生する装置
- 回転速度が高いモータ軸
- 重量物搬送のローラ軸
特に回転体では、曲げが振れ(ランアウト)や異常振動を引き起こします。
曲げ応力と疲労破壊の関係
曲げ応力は軸の寿命に大きく影響します。
- 応力が許容値ギリギリ → 寿命低下
- 繰り返し荷重 → 疲労亀裂が発生
- 表面粗さが悪い → 亀裂の起点になる
軸は回転しながら荷重を繰り返し受けるため、疲労破壊の代表例となります。
曲げ応力を低減する方法
① 軸径を太くする
断面係数 Z が増え、応力が大幅減少。
② オーバーハング量を短くする
突出量を短縮することが最も効果が高い。
③ 荷重を軽くする/中心に近づける
偏荷重を減らすことで曲げを抑制。
④ 高剛性材を使用する
材質変更で応力耐性が向上。
⑤ 支点(ベアリング)を追加する
軸受間隔を狭めることで曲げが激減する。
関連記事
関連書籍
まとめ
シャフトの曲げ応力は、軸に荷重が加わったときに発生する重要な応力であり、破損・寿命・振動に大きな影響を与えます。
- 曲げ応力=曲げモーメント ÷ 断面係数
- オーバーハングが大きいほど応力増大
- 偏荷重も大きな要因
- 軸径・支点位置・材質で改善可能
設計・保全のどちらでも必ず押さえておくべき基礎知識です。












