スラスト荷重(Thrust load)とは、軸の軸方向(縦方向)にかかる力のことです。
ベアリング選定・ギア設計・カップリング調整など、回転機械のあらゆる場面で重要な要素となります。
この記事では、スラスト荷重の基礎、ラジアル荷重との違い、発生原因、対応するベアリング、実務での注意点をわかりやすく解説します。
スラスト荷重とは?
スラスト荷重とは、軸の中心線方向(縦方向)に加わる力です。
簡単に言うと:
押す・引く方向にかかる力 = スラスト
例:
- ねじ・ボールねじの押し引き力
- 羽根車(インペラ)が押される力
- ギアの歯が斜めに受ける力(ヘリカルギア)
スラスト荷重とラジアル荷重の違い
| 荷重の種類 | 方向 | 例 |
|---|---|---|
| ラジアル荷重 | 横方向(半径方向) | プーリやベルトからの横力 |
| スラスト荷重 | 縦方向(軸方向) | 押し引き・軸方向の負荷 |
※ベアリングの寿命と種類選定に直結する重要な違いです。
スラスト荷重が発生する主な原因
- はすば歯車(ヘリカルギア)のねじれ角による軸推力
- ボールねじの推力
- ポンプ・送風機インペラの圧力差
- 温度差による軸伸び
- カップリングの芯ズレに伴う軸方向変位
スラスト荷重に対応するベアリング
スラスト荷重が大きい機構では、以下のベアリングが使われます。
① ころ軸受(アンギュラ玉軸受)
斜角を持つため、スラスト荷重を受けやすい。
② 円すいころ軸受
大きなスラスト荷重に強く、主軸用途に最適。
③ スラスト玉軸受
純粋に軸方向力を支えるための専用軸受。
④ 円筒ころ(組み合わせで対応)
ラジアル向けだが、組み合わせてスラストにも使用可能。
実務での注意ポイント
- ラジアル荷重しか想定していないベアリングにスラストを与えない
- ギアの種類(ヘリカル/スパー)で推力が大きく違う
- カップリングの芯ズレでスラストが増加
- 温度で膨張した軸が押し付け荷重を発生する
- スラスト荷重を無視すると寿命が極端に短くなる
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まとめ
スラスト荷重は、軸方向にかかる力であり、ベアリング寿命と静粛性に大きな影響を与えます。
- 軸方向の押し引きがスラスト荷重
- ギア・インペラ・ボールねじで大きく発生
- スラスト対応ベアリングを選定することが必須
- 芯ズレや熱膨張でもスラストは増加する
正しく理解することで、回転機械の寿命と信頼性が大きく向上します。












