スラストワッシャ(Thrust Washer)は、**軸方向荷重(スラスト荷重)を受けるための薄い円板状の部品**で、回転機構・リンク機構・ギア装置などで広く使用されています。
摩擦低減、偏摩耗防止、ガタ取り、部品の位置決めなど、さまざまな重要機能を担っています。
この記事では、スラストワッシャの役割、材質、種類、使われる場面、選定ポイントをわかりやすく解説します。
スラストワッシャとは?
スラストワッシャとは、
回転体や軸が受ける“軸方向の力(スラスト荷重)”を支持するための円板状部品
のことです。
主に以下の役割があります:
- スラスト荷重を受ける
- 摩耗を防ぐ(摩擦面の保護)
- ガタ(軸方向遊び)の調整
- 軸受・ギアの位置決め
構造はシンプルですが、回転機器では欠かせない要素部品です。
スラストワッシャが必要となる場面
スラスト荷重が加わると、軸や軸受が摩耗・焼付きしやすくなります。
これを防ぐためにスラストワッシャが使用されます。
代表的な使用例
- ギアが噛み合うときの軸方向反力
- 回転軸の位置決め
- スラスト方向の摩擦低減
- リンク機構の摺動部
- 車両・産業機械の回転ジョイント
ベアリング単体では受けきれない「面圧の分散」にも有効です。
材質の種類と特徴
用途によって、以下の材質がよく使われます。
① 鋼(焼入れ鋼)
耐摩耗性が高く、高荷重に強い。
ギアや重負荷部で使用。
② 黄銅・真鍮
摺動性がよく、適度な強度。
リンク機構などに使用。
③ 青銅(リン青銅)
摩擦特性がよく、耐食性も高い。
④ 樹脂(POM、PTFE、ナイロン)
潤滑不要、軽量、静音性に優れる。
⑤ 焼結金属
自己潤滑性があり、小型機器で人気。
材質で摩擦係数・耐荷重・耐久性が大きく変化します。
スラストワッシャの種類
① 平形スラストワッシャ
最も一般的。軸とハウジング間のスラスト荷重を受ける。
② フランジ付きワッシャ
位置決めがしやすく、横ずれを防ぐ。
③ 樹脂スラストワッシャ
潤滑不要・低摩擦で静音性を重視する用途に最適。
④ スラスト軸受(ボール・ローラ)用ワッシャ
ベアリングと組み合わせて高荷重を支持する。
スラストワッシャの選定ポイント
選定時には以下を確認します。
- 想定スラスト荷重(N)
- 回転速度(rpm)
- 面圧に耐えられるか
- 摩耗しやすい環境か
- 潤滑可能か(油・グリース)
- 必要なガタ(クリアランス)量
高荷重・高速回転など条件に応じて、材質や厚さを選ぶ必要があります。
よくあるトラブルと対策
① 摩耗が早い
→ 材質見直し(鋼・青銅など)
→ 潤滑改善
② ガタが大きい
→ 厚み違いのワッシャを追加して調整する
③ 異音が発生
→ 樹脂ワッシャに変更することで改善
④ 焼付き
→ 潤滑不足または材質不適合が原因
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まとめ
スラストワッシャは、回転体に加わる軸方向荷重を受け止める重要な部品で、摩耗防止・位置決め・ガタ取りなど幅広い役割を果たしています。
- スラスト荷重を受けるための円盤状部品
- 材質により摩擦特性・耐荷重が変わる
- ギア・軸受・リンク機構など多くの場面で使用
- 摩耗・焼付きは材質や潤滑を見直すことで改善
シンプルながら、装置の寿命や騒音に大きく関わる要素部品です。












