トルクとは回転させる力の大きさを示す物理量で、モーター・ボルト締結・工作機械など、あらゆる産業機器で重要になる基本概念です。
この記事では、トルクの定義、単位、回転数との関係、実務での使い方をわかりやすく整理して解説します。
トルクとは?
トルク(Torque)は、物体を回転させようとする力のモーメントのことです。
もっとも基本的な式は以下の通りです。
トルク(N・m)= 力(N) × 距離(m)
例:10N の力を 0.3m のスパナで加える
→ 10 × 0.3 = 3N・m
つまり、同じ力でも「長い工具を使う」とトルクが大きくなります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定義 | 回転させる力の大きさ |
| 式 | トルク=力×距離 |
| 主な用途 | ボルト締結、モータ性能、回転機械の設計 |
トルクの単位
N・m(ニュートンメートル)
最も一般的な国際単位系(SI)です。
kgf・m(キログラムフォースメートル)
古い単位で現場で使われることもありますが、N・mへの置換が推奨されます。
1 kgf・m ≒ 9.80665 N・m
kgf・cm
小型モーター・小トルク工具で残っている場合があります。
トルクと回転数の関係
モータの出力は「トルク × 回転数」で決まります。
出力(kW)= 9.55 × トルク(N・m) × 回転数(min⁻¹) ÷ 1000
ポイント:
- 回転数が低くても、トルクが大きければ高出力
- 回転数が高くても、トルクが弱いと仕事量は小さい
回転機械の選定では必ず両方をチェックします。
トルクが重要になる場面
ボルトの締付け
ボルトは規定トルクを守らないと、
・ゆるみ
・破断
・漏れ
などの原因となります。
そのため、トルクレンチやトルクドライバーが使用されます。
モーター・減速機の選定
必要トルクを計算し、それに余裕係数をかけて選定します。
特に以下を確認します。
- 起動トルク
- 最大トルク
- 減速機の許容トルク
ポンプ・ファン・コンプレッサ
負荷トルク特性が異なるため、仕様を理解することが重要です。
| 機器 | 負荷特性 |
|---|---|
| ポンプ | 流量に比例 |
| ファン | 回転数の三乗に比例 |
| コンプレッサ | 圧力に依存 |
トルクの測定方法
- トルクセンサー(実験・設備検証)
- トルクレンチ(締付け確認)
- 電流値推定(モーター負荷の簡易計測)
トルクと関連する用語
回転数(rpm)
回りの速さ。トルクと組み合わせて出力が決まります。
馬力(PS・HP)
出力の単位。
1PS ≈ 0.735kW
実務での注意点
- 潤滑状態で締付けトルクが変わる
- 延長バーを使うとトルク値が大幅に変化する
- モータは「定格トルク」「最大トルク」両方確認が必要
- 減速機は許容トルク超えで寿命が短くなる
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まとめ
トルクは、物体を回転させる力を表す基本量で、ボルト締結・モータ選定・回転機械の設計など多くの工程で重要です。
正しい理解とトルク管理によって、安全性・品質・効率が大幅に向上します。












