回転機械で発生する振動の原因として最も代表的なのが **アンバランス(不釣り合い)** です。
アンバランス量が大きいと、軸受の寿命低下、騒音、共振、回転精度の悪化など、多くのトラブルを引き起こします。
この記事では、アンバランス量の定義、単位、発生メカニズム、測定方法、許容値、改善手法までをわかりやすく解説します。
アンバランス量とは?
アンバランス量(Unbalance Amount)とは、
回転体の質量中心が回転軸からどれだけズレているかを示す量
です。
質量中心が軸からズレていると、回転時に遠心力が発生し、その力が振動・騒音の原因になります。
アンバランス量 U は次の式で定義されます。
U = m × e
m:偏心している質量
e:回転軸からの偏心距離
アンバランスの単位
工業的に使用される単位は次のとおり。
- g・mm(最も一般的)
- kg・mm
- g・cm
例えば
「10 g・mm」= 10g の重さが軸から 1mm ずれている状態です。
アンバランスが発生する原因
アンバランスは製造精度や組付け誤差、摩耗によって発生します。
① 製造誤差
- 厚みや密度の偏り
- 加工の偏肉
- 穴位置のずれ
② 組付け誤差
- キーの偏り
- ボルトの不均等
- 嵌合の傾き
③ 摩耗・汚れ
- 羽根への汚れ付着(ファン)
- 摩耗により形状が変化
④ 修理・改造時のアンバランス
部分再加工による偏肉が原因になることもあります。
アンバランスが発生するとどうなる?
- 機械の大きな振動
- 軸受(ベアリング)の寿命短縮
- 異音・騒音の増加
- 回転精度の悪化
- 部品の緩み・破損
- ねじれ振動の誘発
高速回転になるほど影響が大きくなります。
アンバランスの種類
① 静アンバランス(Static Unbalance)
質量中心が回転軸からずれている状態。
② 偏心アンバランス(Couple Unbalance)
軸の両端で偏心方向が異なる状態。
③ 動アンバランス(Dynamic Unbalance)
静とカップルが混合した一般的な形態。
アンバランス量の測定方法
① バランシングマシン
最も一般的で精度が高い。
② 振動解析(FFT)
1X(回転次数)振動が支配的であればアンバランスの疑い。
③ 試し重り法(Trial Weight Method)
現場での簡易バランス補正。
アンバランスの許容値
ISO 1940-1(G値)が一般的に用いられる。
例:
- G6.3:一般産業機械
- G2.5:精密回転機械(モータ、スピンドル)
- G1.0:高精度スピンドル
G値が小さいほど高精度です。
アンバランスを改善する方法
① 重量除去(削る)
外周を削り、偏心質量をなくす。
② ウェイト追加
不足側に重りを追加しバランスを取る。
③ 部品の清掃
ファンやブロワは付着物の除去だけで改善することも多い。
④ 高精度加工の採用
加工精度を上げればアンバランスも減少。
⑤ 両面バランス(動バランス)
高速回転機には必須。
関連記事
関連書籍
まとめ
アンバランス量は回転体の「質量中心のずれ」を表す重要指標で、振動・騒音・寿命に大きな影響を与えます。
- U = m × e で定義される
- 単位は g・mm が一般的
- アンバランスは振動の最大要因
- ISO の G値で許容範囲を判断
- 動バランス・清掃・加工精度で改善可能
回転機の健康性を保つため、アンバランス管理は不可欠です。












