
冷却塔(クーリングタワー)は、循環水を冷却して設備の温度を一定に保つ重要な装置です。
放置するとスケール(石灰質付着)や藻類の発生により熱交換効率が低下し、エネルギーロスや装置損傷につながります。
この記事では、冷却塔の点検項目と保守方法をわかりやすく解説します。
冷却塔の点検・保守の目的
冷却塔は水・空気・熱が常に接触する環境にあるため、スケールや腐食、藻・スライムなどの汚れが発生しやすい設備です。
定期点検によりこれらを防止し、冷却効率と衛生状態を維持することが目的です。
主な点検目的
- スケールや汚れによる熱交換効率低下の防止
- 藻類・細菌の繁殖抑制(レジオネラ対策)
- ファン・モーターの異常検知
- 腐食や漏水の早期発見
点検周期の目安
点検区分 | 主な内容 | 周期 |
---|---|---|
日常点検 | 水位・ファン運転・異音・漏水確認 | 毎日〜週1回 |
定期点検 | スケール・藻清掃・フィル充填材確認 | 3〜6か月ごと |
年次点検 | 分解清掃・ファン・モーター整備 | 1年に1回 |
日常点検のポイント
- 冷却水の水位・透明度を確認
- 異音・振動・モーター過熱の有無
- ファンベルトの緩み・損傷
- ドリフト(飛沫)発生量の増減
- 水漏れや外装腐食の有無
定期点検の内容
① スケール・スライム除去
スケール(炭酸カルシウムなどの沈着)やスライム(藻類・バクテリア膜)は熱交換性能を低下させます。
薬品洗浄や高圧洗浄で除去し、必要に応じて防スケール剤を使用します。
② ファン・モーターの点検
ファン羽根の変形や汚れを確認し、アンバランスによる振動がないかをチェックします。
モーターは軸受温度・電流値・絶縁抵抗を測定し、異常があれば整備を行います。
③ 給水・オーバーフロー装置の確認
フロートバルブやオーバーフロー配管が正しく作動しているかを確認。
水位が適正でない場合、ポンプキャビテーションやドライ運転の原因になります。
④ 充填材(フィル)の確認
汚れや破損がある場合、通水不良を起こして冷却性能が低下します。
年1回の目視点検と清掃を推奨します。
⑤ 水質・薬品管理
pH・導電率・硬度を定期測定し、薬品濃度を管理します。
レジオネラ菌対策として、定期的に消毒・薬注装置の確認を行います。
主な異常と原因・対策
現象 | 主な原因 | 対策 |
---|---|---|
冷却能力低下 | スケール・藻類付着・通風不足 | 清掃・薬品洗浄・風量確認 |
異常振動 | 羽根汚れ・アンバランス・軸ずれ | 羽根清掃・芯出し |
水漏れ | 配管腐食・パッキン劣化 | 補修・交換 |
臭気・菌発生 | 藻・バクテリア繁殖 | 殺菌剤投入・定期清掃 |
点検・保守に役立つツール
Q&A
Q. 冷却塔のスケールはどのように防げますか?
A. 定期的な薬品洗浄と水質管理(硬度・pHの調整)で防止できます。
防スケール剤や磁気処理装置の導入も有効です。
Q. レジオネラ対策はどのようにすれば良いですか?
A. 定期的な薬品殺菌、循環水の入れ替え、デッドスペースの洗浄を徹底します。
自治体のガイドラインに基づく年1回の水質検査も推奨されます。
Q. 冷却塔モーターの点検ポイントは?
A. 絶縁抵抗・電流バランス・軸受温度を測定します。
振動がある場合は羽根アンバランスや芯ずれの可能性があります。