超音波探傷器(UT)の原理と用途|内部欠陥を“音”で見抜く非破壊検査

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超音波探傷器(UT: Ultrasonic Tester)は、金属や樹脂などの内部欠陥を非破壊で検出する装置です。

溶接部や鋳造部、配管、タンクなどの品質保証や設備保全に広く使用されています。

本記事では、超音波探傷器の原理・種類・測定方法・代表メーカーをわかりやすく解説します。




超音波探傷器とは?

超音波探傷器は、材料内部に高周波音波を送信し、その反射波を受信して欠陥の有無や位置を判断する装置です。

材料を壊さずに内部の状態を調べることができるため、非破壊検査(NDT:Non Destructive Testing)の代表的手法として利用されています。

主な用途

  • 溶接部の割れ・ブローホール・スラグ混入検出
  • 鋳造部・鍛造部の内部欠陥検査
  • 配管・タンク・圧力容器の厚さ測定・腐食診断
  • 軸・ボルト・金属部品のき裂検査
  • 樹脂成形品のボイド確認

測定の基本原理

探触子(プローブ)から材料内部に超音波を送信し、境界面や欠陥で反射して戻るエコーを時間軸上に表示します。

この反射波(エコー)の位置・高さ・時間差から欠陥の深さや大きさを推定します。

代表的な方式

  • パルス反射法: 1つの探触子で送受信を行う最も一般的な方式。
  • 透過法: 送信側と受信側に別探触子を配置し、透過強度で欠陥を判定。
  • フェーズドアレイ法(PAUT): 多素子探触子で波束を制御し、画像的に欠陥位置を可視化。

探触子(プローブ)の種類

種類 特徴 主な用途
垂直探触子 垂直に音波を入射。厚さ・平面検査に使用。 板厚測定、配管、タンク底部
斜角探触子 音波を角度入射。溶接部や内部欠陥の検出に有効。 溶接継手部、内部割れ検査
二探触子法 送信と受信を別素子で構成。表面近くの欠陥検出に適す。 薄板、表面近傍欠陥

測定手順

  1. 測定対象の表面を清掃し、油分や錆を除去。
  2. 探触子と被測定物の間に接触媒質(カプラント)を塗布。
  3. 基準ブロックを用いて音速・ゼロ点・感度を校正。
  4. エコー波形を観察し、欠陥の有無と深さを判断。
  5. 必要に応じてデータを保存・レポート化。

測定時の注意点

  • 探触子の接触状態が悪いと反射波が弱くなる。
  • 材質によって音速が異なる(例:鋼5900m/s、アルミ6320m/s)。
  • 表面粗さ・形状・温度変化によって誤差が発生する。
  • 配管のカーブ部などは専用治具を使用。

主要メーカーと代表機種

JFEアドバンテック

国内非破壊検査機器の大手。探傷器・厚さ計・漏洩検知装置など幅広く展開。

オリンパス(OLYMPUS)

世界的非破壊検査機器メーカー。高精度・多機能で国際規格に準拠。

日立ハイテク

産業検査装置に強みを持ち、高精度な厚さ測定・探傷システムを展開。

Riken Denshi(理研電子)

国内中堅メーカーで、溶接部・鉄鋼材向け探傷器を多数展開。

探傷結果の評価基準

  • 欠陥深さ・幅・反射強度を比較して危険度を判断。
  • JIS Z 3060(超音波探傷試験方法)に基づく評価が一般的。
  • 溶接部ではエコー高さ比(dB差)や距離補正法(DAC法)を使用。

活用のポイント

  • 金属疲労や腐食による亀裂を早期に発見可能。
  • 製造品質の保証だけでなく、定期保全にも応用。
  • フェーズドアレイ探傷(PAUT)やTOFD法を組み合わせると解析精度が向上。

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Q&A

Q. 鉄以外の材料にも使えますか?

A. はい。アルミ・ステンレス・プラスチックなど多くの材料に対応していますが、音速設定を変更する必要があります。

Q. 厚さ測定もできますか?

A. 可能です。超音波厚さ計(UTベース)を使用すれば腐食や減肉の測定も非破壊で行えます。

Q. 欠陥サイズはどの程度検出可能ですか?

A. 条件にもよりますが、数mmクラスの微小欠陥まで検出可能です。高分解能プローブやPAUT法を使えばさらに精度が上がります。

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