振動計の基礎知識|回転機械の異常を数値で見抜く

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振動計(バイブレーションメータ)は、モーター・ポンプ・ファン・ブロワ・コンプレッサなどの回転機械に発生する振動を測定し、軸受の摩耗や芯ずれ、アンバランスなどの異常兆候を数値で把握するための機器です。

本記事では、振動の基礎単位、測定方法、現場での活用ポイント、機種選定のコツをわかりやすく解説します。




振動計とは?(役割と用途)

振動計は、機械の状態を「音や感覚」ではなく数値で把握するための測定器です。

点検ルートでの定期測定や、据置型センサーによる常時監視により、トラブルの前兆(ベアリング劣化、アンバランス、芯ずれ、共振など)を早期に検出できます。

主な用途

  • モーター・ポンプ・ファン・コンプレッサの保全点検
  • 軸受(ベアリング)の異常検知・寿命予測
  • 据付後の芯出し・バランス調整の評価
  • オーバーホール後の状態確認

振動の3つの物理量と単位

  • 加速度(Acceleration):m/s² または g  … 早期の異常検出に有効
  • 速度(Velocity):mm/s(rms) … 一般的な劣化評価、現場判断で使いやすい
  • 変位(Displacement):μm(p-p) … 低周波・大振幅の把握に有効

多くのハンディ振動計は「速度(mm/s rms)」を標準表示とし、加速度・変位への変換機能を備えています。

測定方式とセンサーの種類

  • 圧電式加速度ピックアップ:最も一般的。広い周波数帯域で安定。
  • 磁石ベース取付:取り外しが容易でルート点検向き。
  • ねじ込み・接着:再現性が高く、傾向管理や据置監視向け。
  • ハンドプローブ:簡便だが高周波の再現性はやや低下。

測定手順(現場フロー)

  1. 測定点を決め、機器ごとに測定ルート表を作成(例:モーター前後軸受、ポンプ側軸受、垂直・水平・軸方向)。
  2. 同じ測定点・条件(回転数・負荷・設置向き)で、毎回同じ方法で測定し再現性を確保。
  3. 指示値(速度mm/sなど)を記録。併せて温度・電流も控えると診断精度が向上。
  4. しきい値を超えたら、FFTスペクトルや軸受高周波(ベアリング診断)で原因を切り分け。

よくある異常と振動の特徴

現象 振動の傾向 主な原因 対策
アンバランス 回転基本周波数(1×)が卓越 羽根・インペラの汚れ/重量偏り 清掃・バランス調整
芯ずれ(ミスアライメント) 2×・3×成分が上昇、軸方向振動 カップリング芯出し不良 レーザー芯出し・再据付
ベアリング劣化 高周波域の広帯域ノイズ増大 転動面の損傷・潤滑不良 給脂・ベアリング交換
共振 特定回転域で急増 基礎剛性不足・固定不良 固定強化・運転条件見直し

周波数解析(FFT)の基礎

時間波形だけでは原因を特定しづらい場合、FFTスペクトルで周波数ごとの振動成分を確認します。

1×回転成分はアンバランス、2×や3×はミスアライメント、高周波ノイズの増大はベアリング劣化など、パターン認識で切り分けが可能です。

しきい値設定と傾向管理

  • 新設・整備直後の値を「基準値」として保存。
  • 同条件・同測点で定期測定し、トレンドグラフで増加傾向を監視。
  • 警報(Warning)・停止(Alarm)などの段階しきい値を設定し、点検→整備の判断を標準化。

機種選定のチェックリスト

  • 表示量:速度(mm/s)を基本に、加速度・変位も扱えると便利
  • 周波数レンジ・分解能:回転数に見合った帯域をカバー
  • センサー取付:磁石ベース付属、延長ケーブル有無
  • 解析機能:FFT/ピークホールド/ベアリング診断インジケータ
  • データ管理:メモリ・Bluetooth/CSV出力・ルート管理ソフト対応
  • 現場性:耐塵・耐油・バッテリー持続・バックライト

安全上の注意

  • 回転体に接近しすぎない、巻き込み防止(手袋・衣類に注意)。
  • 高温部位・高所は落下・やけど対策を実施。
  • 防爆区域・電気設備周辺は現場ルールに従う。

おすすめの測定・管理ツール

Q&A

Q. まずは速度(mm/s)を見れば十分ですか?

A. はい。速度(rms)は劣化全体の把握に適しており、現場判断に使いやすい指標です。異常傾向が出たら加速度やFFTで深掘りします。

Q. 磁石取り付けとハンドプローブ、どちらが良い?

A. 再現性重視なら磁石・ねじ込みが有利です。ハンドプローブは簡便ですが、高周波の取りこぼしが起きやすい点に注意します。

Q. ルート点検の頻度は?

A. 重要設備は月1回以上、一般設備は1〜3か月が目安です。負荷変動が大きい設備は短めに設定します。

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