設備診断や保全の仕事は、経験だけでなく「知識の体系化」と「技術の裏付け」が求められます。
本記事では、保全技術者がスキルアップするために有効な資格制度・講習・教育プログラムを整理し、人材育成の観点からも実践的な学習方法を紹介します。
1. 設備診断・保全に関連する主な資格
設備診断や保全分野には、国家資格・民間資格・業界認定資格など、目的に応じた多様な制度があります。
① 設備診断士(一般社団法人 日本設備管理学会)
設備の劣化診断・余寿命評価・保全計画立案などを行う専門資格。
講習と試験で構成され、実務経験者に特に有効です。
- 受験要件:実務経験3年以上が目安
- 学習範囲:劣化メカニズム、振動・電流解析、余寿命評価、事例研究
- 活用例:設備診断業務、更新判断、外部委託先との技術折衝
② 機械保全技能士(厚生労働省認定)
国家資格として最も広く認知される保全系資格。
機械系・電気系・設備診断系の3分野があり、実務力を証明できます。
- 区分:1級〜3級(実技+筆記)
- 特徴:現場力+理論をバランスよく習得できる
- 受験者層:製造業保全担当、メンテナンス技術者
③ 振動診断士(日本機械学会認定)
モータ・ポンプ・ファンなどの回転機械の振動診断技術を評価する資格。
故障診断の専門性を高めたい技術者に最適です。
- ランク:上級・中級・初級
- 学習範囲:振動理論、FFT解析、診断事例
- 関連機器:振動計、解析ソフト
④ 設備保全士(日本プラントメンテナンス協会)
保全の体系知識を広く身につけたい人に向けた資格。
故障モード、予防保全、改善手法などを包括的に学べます。
⑤ 電気主任技術者・電気工事士
電気設備の管理・点検を行うための法的資格。
保全業務の範囲を拡大するために取得しておくと強みになります。
2. 教育・研修制度の活用
資格取得だけでなく、日常的な教育プログラムを取り入れることで、組織全体の保全力を底上げできます。
① 外部研修・講習会
- 日本プラントメンテナンス協会(JIPM)主催講習
- 日本能率協会(JMA)の保全講座
- 各メーカー主催のメンテナンスセミナー
② 社内教育・OJT
診断ツールの使い方や点検手順を、実際の設備で教育。
OJTの中に「振動測定」「サーモ診断」など実践項目を取り入れると効果的です。
③ eラーニング・オンライン教育
時間や場所の制約を受けずに学べる教育形式です。
- eJIPM保全教育シリーズ
- 日刊工業新聞社のオンライン講座
- Udemy・YouTubeのメンテナンス講義
3. 教育体系の構築ポイント
組織で保全教育を体系化する場合、以下のステップで整備します。
- 必要スキルの明確化(診断・測定・解析・改善)
- 教育マップの作成(初級→中級→上級)
- 評価基準の設定(スキルシート)
- 社内資格制度・表彰制度の導入
4. 学習効果を高める工夫
- 現場課題と結びつけて実践的に学ぶ
- 診断報告書を教材化し、知識の共有を図る
- IoT・AIツールを取り入れた最新技術も併せて学ぶ
- 他社の成功事例・展示会を積極的に視察
5. 教育のデジタル化
近年では、教育内容のデジタル化が進み、点検・教育・報告書作成クラウドツールのように、教育履歴やスキル進捗をオンラインで管理できる仕組みも普及しています。
各従業員の得意分野やスキルギャップを可視化することで、教育効率が大幅に向上します。
まとめ
保全・診断の世界は技術革新が早く、常に知識とスキルの更新が求められます。
資格や教育を通じて学び続けることは、個人の成長だけでなく、「止まらない工場」「安全で強い現場」をつくる基盤です。
まずは一つの資格や講習から始め、段階的に専門性を深めていきましょう。







