
赤外線サーモグラフィは、設備の表面温度を非接触で可視化できる診断ツールです。
この記事では、赤外線カメラを用いた設備診断の考え方や、温度分布から異常箇所を特定する方法を解説します。
赤外線サーモグラフィ診断とは?(基礎知識)
赤外線サーモグラフィ診断とは、設備や建屋の表面温度分布を赤外線カメラで測定し、異常発熱や冷却不足を可視化する技術です。
測定対象に接触せずに広範囲を確認できるため、安全で迅速な診断が可能です。
- 異常発熱箇所を視覚的に確認できる
- 稼働中でも測定可能(停止不要)
- 設備全体の温度バランスを把握できる
サーモグラフィ診断で検出できる主な異常
設備の種類 | 代表的な異常 | 診断ポイント |
---|---|---|
電気設備(配電盤・ケーブル) | 接触抵抗増大による局所発熱 | 端子・ヒューズ部が周囲より高温 |
モータ・ポンプ | 軸受・巻線の発熱、冷却不足 | 軸受部や端子カバーが高温 |
配管・バルブ | 断熱材の劣化、流体漏れ | 温度のムラ・局所的な低温部 |
冷却設備・チラー | 熱交換器の目詰まり・冷媒不足 | 温度差が小さい箇所に着目 |
建屋・外壁 | 断熱不良、雨漏り箇所 | 温度ムラ・湿気部の冷却特性変化 |
診断の進め方
- 測定環境の確認(直射日光・風・湿度を考慮)
- 設備の運転状態を確認し、正常運転時に撮影
- サーモグラフィカメラで複数角度から撮影
- 温度分布画像を解析ソフトで比較・分析
- 異常箇所を報告書にまとめ、保全計画に反映
測定時は、**放射率(Emissivity)** の設定が非常に重要です。対象材質に応じた放射率を設定することで、正確な温度データが得られます。
診断結果の読み取り例
温度分布の特徴 | 想定される原因 | 対応策 |
---|---|---|
局所的に高温(ホットスポット) | 接触抵抗、潤滑不良、熱伝導不良 | 接続部清掃・再締結・部品交換 |
全体的な温度上昇 | 冷却不足、負荷過多 | 冷却系の点検、風量確認 |
温度分布の左右差 | 断熱不良、配管詰まり | 断熱材補修、流体ライン洗浄 |
異常な低温部 | 冷媒漏れ、流量不均衡 | 漏れ検知・修理、バルブ調整 |
定期診断とトレンド管理
赤外線診断は「一度きり」ではなく、同一条件での定期撮影により劣化傾向を可視化できます。報告書に画像を残しておくことで、次回測定との比較が容易になります。
- 季節・負荷条件を統一した定点観測
- 設備ごとの「正常温度範囲」を登録
- 温度上昇率・推移グラフによる劣化監視
代表的なサーモグラフィ診断機器
メーカー | 主な製品・特徴 |
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FLIR(フリアー) | 産業用・建築用に幅広く対応。AI解析モデルも展開。 |
日本アビオニクス(NEC Avio) | 高解像度赤外線カメラ。配電盤やモータ監視に強み。 |
キーエンス(KEYENCE) | 固定型サーモセンサと組み合わせた自動監視システム。 |
ヒロセ電機 | コンパクト型・現場持ち運びモデルを展開。 |
まとめ
赤外線サーモグラフィ診断は、非接触で安全に異常を可視化できる有効な手段です。
温度の偏りや発熱傾向を早期に発見し、定期的な比較データを残すことで、予知保全の精度を高めることができます。