
点検チェックリストの作り方|記録・報告を効率化する方法
設備点検は「抜け漏れを防ぐ仕組み」と「再現性の高い記録」が要です。本記事では、現場で使いやすく、報告・改善につなげやすいチェックリストの作り方を、テンプレート構造・判定基準・写真運用・デジタル化の観点で解説します。
チェックリスト設計の基本方針
- 目的起点:安全確保/品質維持/停止防止など目的を明記し、判定基準と紐づける
- 現場適合:設備ごとの癖(振動・温度・漏れやすい箇所)を優先配置
- 再現性:測定条件(負荷・温度・照度・測定点)を欄として固定
- 即時性:写真・動画添付を前提に、報告までワンフロー化
項目の分類(おすすめの3層)
層 | 例 | ねらい |
---|---|---|
①共通点検 | 異音/異臭/漏れ/温度/振動/清掃 | 全設備に共通する“異常の兆候”を網羅 |
②設備固有 | モータ:軸受温度/ポンプ:シール漏れ/ファン:羽根損傷 | 故障モードごとの重点監視 |
③法規・安全 | 保護具/危険表示/ロックアウト・タグアウト | 労災・遵法観点の抜け漏れ防止 |
判定基準(RAG+優先度+期限)
判定のブレを抑えるため、色分け(RAG)に加え、是正優先度・期限をセットで記録します。
判定 | 定義例 | 対応 |
---|---|---|
🟥 NG | 基準逸脱/運転継続で損傷リスク高 | 即時停止 or 当日是正、管理者へ即報 |
🟧 注意 | 傾向悪化/基準近傍 | 期限付き保全オーダ発行(例:7日以内) |
🟩 OK | 基準内/変化なし | 次回点検で推移確認 |
記録の再現性を上げる“条件欄”の作り方
- 運転条件:負荷(%)・回転数(rpm)・ライン速度
- 環境条件:周囲温度・湿度・照度(ライト機種・CRI)
- 測定条件:測定点ID/測定面/センサ固定方法(磁石/手持)
- 撮影条件:距離・角度・露出(可能なら自動記載)
写真・添付ファイルの運用ルール
- 「全景→中景→近接」の順で最大3枚、同一位置・同一角度を徹底
- 比較用に「前回・今回」を並列貼付(差分強調)
- ファイル名規則:
設備ID_測定点ID_yyyymmdd_撮影者
テンプレート構成(コピペで使える最小単位)
設備ID | 測定点ID | 点検項目 | 基準値/条件 | 結果 | RAG | 是正優先度 | 期限 | 写真 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
EX-01 | BRG-1 | 軸受温度 | ≦80℃(負荷70%) | 76℃ | 🟩 | – | – | 全/中/近 | 冷却ファン清掃済 |
EX-01 | SEAL-A | 漏れ | 目視ドライ/滴下なし | 微滲み | 🟧 | M | 7日 | 近接1枚 | パッキン硬化 |
EX-01 | MTR-VIB | 振動 | < 4.5 mm/s(RMS) | 6.1 | 🟥 | H | 当日 | 波形添付 | 芯出し要 |
Excel/クラウド併用のコツ
- Excel台帳:入力規則(プルダウン)と条件付き書式でRAG自動色分け
- 共有フォーム:スマホ入力→写真添付→自動で台帳へ集計
- CMMS連携:NG/注意の自動チケット化、期限超過の通知
よくある失敗と対処
失敗例 | 原因 | 対処 |
---|---|---|
項目が多すぎて形骸化 | 現場負荷過大・優先度不明 | RPN(頻度×影響×検出)で項目を間引く |
判定ブレ | 基準が定性的 | 数値閾値・写真見本・OK/NG例の添付 |
是正が後回し | 誰がいつまでに、が不明確 | 担当/期限/優先度の必須化と自動通知 |
導入・教育チェックリスト
- 目的/判定基準/写真ルールをA4 1枚で周知
- 模擬点検→レビュー→修正を2サイクル実施
- NG項目の是正リードタイムを月次でKPI化
まとめ
よいチェックリストは「短時間で同じ品質の記録が残る」設計です。RAG判定・期限管理・写真比較を仕組みに落とし込み、Excel/CMMSへの拡張で、報告から是正までの一気通貫を実現しましょう。
関連記事