
モータやポンプなどの回転機械は、製造現場で最も多く稼働している設備のひとつです。
異常振動や回転数の変化、発熱などの兆候を総合的に監視することで、突発的な停止や損傷を防ぐことができます。
この記事では、タコメータ・振動・温度を組み合わせた「回転機診断」の基本を紹介します。
回転機診断とは?(基礎知識)
回転機診断とは、モータ・ポンプ・ブロワなどの回転体を対象に、回転数・振動・温度など複数のパラメータを測定し、運転状態や異常を評価する手法です。
単一測定では見えにくい劣化や異常を、複合的に分析することで精度を高めます。
- 回転数の変化 → ベルト・ギアのすべりや負荷変動を検知
- 振動の増加 → ベアリング損傷・アンバランスを検知
- 温度上昇 → 潤滑不良・電気的損失を検知
タコメータによる回転数監視
タコメータ(回転計)は、回転軸やシャフトの速度を非接触で測定する装置です。
光学式・磁気式・接触式のタイプがあり、設備に応じて使い分けます。
方式 | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|
光学式 | 反射シールを貼り、光センサで回転を検知。 | 安全距離を保ちながら測定可能。 |
接触式 | 回転軸にローラを接触させて測定。 | 低速・大型モータの測定に適する。 |
磁気式 | パルスを検知して回転数を算出。 | 長期監視やデータロガーとの連携に最適。 |
測定値をデータロガーや制御装置に入力し、負荷変動やスリップの傾向を記録することで、異常運転を早期に発見できます。
振動・温度との複合診断
回転数だけでは、異常の根本原因を特定できません。
振動・温度データを合わせて取得することで、より確実な診断が可能になります。
測定項目 | 異常の兆候 | 想定される原因 |
---|---|---|
回転数の変動 | 急上昇・急降下 | 負荷変動、ベルト滑り、インバータ不良 |
振動レベル上昇 | 特定周波数でピーク | アンバランス、ミスアライメント、ベアリング摩耗 |
温度上昇 | 定常値より+10℃以上 | 潤滑不足、巻線劣化、冷却不良 |
診断の流れ
- 測定対象を決定(モータ、ポンプ、ブロワなど)
- 回転数・振動・温度センサを設置
- 同時にデータを収集し、運転条件ごとに記録
- 異常値を自動検知・アラート設定
- 解析ソフトで波形・傾向を比較
3要素を同時監視することで、例えば「振動上昇と同時に回転数低下」が発生した場合、ベルト滑りや負荷トルクの過大が疑われるなど、因果関係の特定が容易になります。
定期測定とトレンド分析
回転機の異常は徐々に進行するため、定期的な測定とデータ蓄積が重要です。
特に、ベアリングやカップリングの異常は、初期段階では小さな振動変化にとどまるため、トレンド分析が有効です。
- 1週間・1か月単位での定点測定
- 稼働時間と振動レベルを紐づけ管理
- 異常波形の自動検出・閾値判定
代表的な回転機診断ツール
メーカー | 主な製品・特徴 |
---|---|
小野測器(ONO SOKKI) | 高精度タコメータ、回転同期FFT解析に対応。 |
リオン(RION) | 振動・騒音を同時測定できる診断システム。 |
IMV株式会社 | 常設型モニタリング装置で24時間監視可能。 |
キーエンス(KEYENCE) | 非接触レーザ式回転計や赤外温度センサを展開。 |
まとめ
回転機診断では、回転数・振動・温度といった複数のデータを統合的に評価することが鍵です。
各データの関係性を把握し、異常の兆候を早期に察知することで、設備の信頼性を高め、ダウンタイムを最小限に抑えることができます。
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