
サーボモータは、位置・速度・トルクを精密に制御するための高精度モータです。
その性能を維持するためには、制御信号・トルク変動・エンコーダ信号の診断が不可欠です。
この記事では、サーボモータ診断器を使った異常検出とデータ管理の基礎を解説します。
サーボモータ診断とは?
サーボモータ診断は、モータの動作信号やフィードバックデータを取得し、位置ズレ・トルク波形・速度変動・制御異常などを解析する技術です。
主に以下の3領域で異常を検出します。
- 電気系:相電流不均衡、トルクリップル、電流センサ異常
- 機械系:バックラッシ、軸芯ズレ、摩擦抵抗の変動
- 制御系:ゲイン設定異常、エンコーダずれ、制御ノイズ
サーボモータ診断器の仕組み
診断器は、モータドライバや制御盤から信号を取得し、電流・速度・位置・トルクの波形をリアルタイムで解析します。
解析結果は「トルク-位置グラフ」や「電流スペクトル」として可視化され、異常モードを早期に特定できます。
測定信号 | 主な診断対象 | 解析例 |
---|---|---|
電流波形 | 電気負荷・トルクリップル | 波形歪・異常ピーク |
速度指令 vs 実速度 | 制御ゲイン・摩擦抵抗 | 位相差・過渡応答解析 |
位置偏差 | バックラッシ・エンコーダ異常 | 偏差波形・残差位置 |
温度・トルク | 過負荷・摩耗 | トルク飽和・過熱推移 |
活用シーンと測定手順
- 基準データ取得:新品・整備直後のサーボ動作波形を記録
- 稼働中測定:制御盤通信(RS-485/EtherCAT)経由でリアルタイム波形収集
- 比較診断:トルク・電流・位置偏差の増減傾向をグラフ比較
- 原因分析:電気系か機械系かを切り分け、部位特定
- 履歴管理:年月・部品交換履歴・診断結果を紐付けて保存
代表的な診断項目と異常例
診断項目 | 異常傾向 | 原因 |
---|---|---|
トルクリップル増大 | 周期的波形の変動増 | 摩擦上昇・磁気偏り |
位置偏差の乱れ | 目標追従遅れ・残差 | バックラッシ・減速機ガタ |
電流波形の歪み | 波形非対称・ピーク異常 | 巻線劣化・ドライバ故障 |
応答遅延 | 指令に対し出力が遅い | 摩擦抵抗・エンコーダズレ |
診断器の導入とデータ運用
- ポータブル型:点検・立上げ時のスポット診断に適す
- 組込型(常設):制御盤・PLC内に常時設置、トレンド監視やアラート通知を実装
- クラウド連携:診断結果・履歴・波形をクラウド保存し、再現性とトレーサビリティを確保
代表的なメーカーと特徴
メーカー | 特徴 |
---|---|
安川電機(YASKAWA) | Σシリーズサーボ向け診断ツール。トルク・偏差解析に特化。 |
三菱電機 | MRシリーズサーボ用モニタ。ドライブユニットから直接診断。 |
キーエンス(KEYENCE) | サーボモータ+エンコーダ統合診断。波形比較と自動判定。 |
オムロン(OMRON) | EtherCAT経由で波形をクラウド収集。AI異常検知に対応。 |
パナソニック | 自社ACサーボ「MINAS」シリーズ用解析ソフトを提供。 |
データ管理・トレーサビリティのポイント
- 診断結果を日付・品番・シリアルで管理し、交換履歴と紐付け
- 波形データをExcelまたはCSV形式で保存(後年比較用)
- 異常傾向のグラフ化により「限界値到達」を可視化
- AI分析やクラウドダッシュボードとの連携で自動アラート化
まとめ
サーボモータ診断器は、高精度設備の品質と信頼性を守るための診断中枢です。
トルク・電流・位置偏差などのデータを一元管理することで、わずかな制御異常や機械的劣化も早期に検出できます。
今後はクラウド連携やAI診断の進化により、サーボ保全も「常時監視・自動判定」の時代へと移行しています。