
パレットチェンジャー(Pallet Changer)は、製品を載せ替えることなく「使用するパレットだけを入れ替える」ための装置です。
木製→プラスチック、輸出用燻蒸不要パレットへの交換、破損パレットの即時置換、クリーンゾーン境界での衛生管理などに活用されます。
本記事では、パレットチェンジャーの仕組み・種類・代表的な採用例をわかりやすく解説します。
パレットチェンジャーとは(基礎知識)
フォークリフトやハンドリフトで搬入した荷を、荷崩れさせずに別パレットへ載せ替える機械です。
挟み込み(クランプ)・傾倒・反転・昇降などの機構を組み合わせ、荷姿(段ボール、袋物、ボトル箱、樹脂コンテナなど)に応じて安全・短時間で交換します。
クリーンルームや冷凍倉庫、輸出梱包、入出荷バッファ、工程間の“パレット標準差”解消で導入されます。
導入メリット
- 異種パレット間の即時交換(木製⇔樹脂、ワンウェイ⇔リターナブル)
- 衛生管理の徹底(清浄パレットへの切替、ゾーニング強化)
- 破損パレットの現場置換で安全性・稼働率を向上
- 荷崩れ・手作業の削減による作業負荷低減
種類と仕組み
① サイドクランプ式
左右から荷をクランプし、下部のパレットのみを引抜・挿入して交換。箱物・袋物に幅広く対応し、処理が速いのが特長です。
② チルト(傾倒)式
荷をクランプしたまま装置を傾け、重力を利用して旧パレットを抜き、新パレットへ載せ替え。袋物や柔らかい荷姿に適します。
③ 反転(インバータ)式
荷を180°反転させてパレットを交換。段ボールの角潰れや荷摩擦に配慮が必要ですが、確実な交換が可能です。
④ スライド/リフター一体式
ローラーやスライドテーブルと昇降機構を組み合わせ、最小クランプ力で交換。瓶・PET など壊れやすい荷に用いられます。
基本構成
- クランプユニット(油圧/電動)
- 傾倒・反転・昇降機構
- 安全ガード・ライトカーテン・非常停止
- 出入庫搬送(フォークリフト、ハンドリフト、コンベヤ)
代表的な活用シーン
- 受入ヤード:輸入品の木製パレット → 構内標準の樹脂パレットへ交換
- クリーンルーム前室:外部パレット → 洗浄済みリターナブルへ交換
- 破損検知時:荷を崩さず破損パレットのみ置換
- 冷凍庫出荷:低温対応パレット ↔ 常温用への切替
主要メーカー・システムインテグレータ(例)
カテゴリ | 特徴 | 公式サイト |
---|---|---|
マテハン総合メーカー(例:ダイフク、村田機械、オカムラ) | 自動倉庫・コンベヤと連携したライン提案が可能。安全設計と据付・保守体制が強み。 | ダイフク / 村田機械 / オカムラ |
専業機械・装置メーカー | クランプ・チルト・反転など用途特化モデルを個別設計。壊れやすい荷に配慮。 | |
搬送・据付インテグレータ | 既存ラインやフォークリフト運用に合わせた現場最適化、周辺安全装置の一括対応。 |
方式別の比較
方式 | 対応荷姿 | 強み | 注意点 |
---|---|---|---|
サイドクランプ | 段ボール/袋物/樹脂コンテナ | 処理が速い・汎用性が高い | クランプ圧の最適化が必要 |
チルト(傾倒) | 袋物・柔らかい荷 | 低クランプ圧でも交換しやすい | 傾倒角と荷崩れ対策が必要 |
反転(インバータ) | 箱物・堅牢な荷 | 確実な交換・広い適用範囲 | 角潰れ・ラベル保護に配慮 |
スライド/リフター | 瓶・PET・壊れ物 | 荷ダメージが少ない | 設備コストが高め |
導入時のポイント
- 荷姿・総重量・パレット仕様(サイズ・爪抜き形状・樹脂/木)を定義
- 日当たり処理台数・サイクルタイムと待ち行列(ヤード設計)を見積
- クランプ圧・当て板・滑り止めシート等の「荷保護」条件を事前検証
- 安全柵・ライトカーテン・非常停止などPL対策と作業導線の明確化
- 既存コンベヤ・フォーク運用、WMS(自動倉庫連携)とのインターフェース整合
購入・導入の参考
パレットチェンジャーは現場条件(荷姿・衛生区分・処理量)に合わせた個別設計が基本です。
小型・手動補助タイプやシンプルな反転機は通販でも入手可能で、トライアル用途として有効です。
参考購入リンク
Q&A
Q. どの方式を選べばよいですか?
A. 箱物中心ならサイドクランプや反転式、袋物中心ならチルト式、壊れやすい荷はスライド/リフター式が候補です。現場テストでクランプ圧・当て板の最適値を確認してください。
Q. 導入コストの目安は?
A. 手動補助タイプで数十万〜、電動・油圧クランプ+チルト/反転機構で数百万円〜、ライン連携(コンベヤ・安全装置・制御含む)では1,000万円規模になるケースもあります。
Q. 安全対策は?
A. 動作範囲への人体進入を防ぐ安全柵・ライトカーテン、非常停止、保持力監視(圧力スイッチ)などを必須装備とし、作業導線を分離してください。