切削工具や金型部品としてよく使用される素材、超硬合金。
言葉はよく耳にするものの、超硬合金ってそもそも何なのか調べたことはありますか?
このページでは、超硬合金とは何か、超硬合金の組成や特徴、そもそもの意味やその他の用語である超硬、超硬質合金、英語でのCemented Carbideについて解説します。
超硬合金とは
超硬合金とは、硬質の金属炭化物と鉄系金属を焼結して作られる複合材料・合金ことです。
金属炭化物には、周期律表Ⅳa、Ⅴa、Ⅵa族金属が用いられ、混ぜられる鉄系金属には、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)などが用いられます。
混合される金属の種類や量によって機械特性をはじめ、物性など、様々に変化させられることができます。
超硬合金の組成
代表的な超硬合金は、炭化タングステン(WC)と結合相にコバルト(Co)を使用して、混合・焼結したWC-Co系合金があります。
超硬合金の特性向上や使用目的によっては、炭化チタン(TiC)や炭化タンタル(TaC)などが加えられることもあります。
炭化チタン(TiC)が加えられた超硬合金はWC-TiC-Co系合金と表記され、炭化タンタル(TaC)が加えられた超硬合金はWC-TaC-Co系合金と表記されます。炭化チタン(TiC)と炭化タンタル(TaC)が加えられた超硬合金は、WC-TiC-TaC-Co系合金と表記されます。
他にも結合相をニッケル(Ni)とするWC-Ni系合金や、さらにクロム(Cr)が加えられたWC-Ni-Cr系合金などがあります。
超硬合金の特徴・特性
超硬合金の特徴には、硬度が高いことや温度の変化によって高度低下が少なくなることが挙げられます。
その特徴が活かされているのが切削工具や金型部品であり、その他、耐摩擦特性が求められる部品の素材としても多く利用されています。
しかしながら、超硬合金とハイス鋼(工具鋼)を比較した場合、超硬合金の方が耐摩擦性に優れるものの靭性(粘り)が劣るため、折れたりかけたりする欠点もあります。
求められる耐摩擦性と靭性(粘り)のバランスによっては、超硬合金とハイス鋼を使い分ける必要があります。
JIS規格による超硬合金の種類
超硬合金 JIS記号:HW
金属及び硬質の金属化合物から成り,その硬質相中の主成分が炭化タングステンであり,硬質相粒の平均粒径が 1 μm 以上であるもの。
超微粒超硬合金 JIS記号:HF
金属及び硬質の金属化合物から成り,その硬質相中の主成分が炭化タングステンであり,硬質相粒の平均粒径が 1 μm 未満であるもの。
サーメット JIS記号:HT
金属及び硬質の金属化合物から成り,その硬質相中の主成分がチタン,タンタル(ニオブ)の,炭化物,炭窒化物,窒化物であって,炭化タングステンの成分が少ないもの。
被覆超硬合金 JIS記号:HC
超硬合金の表面に炭化物,炭窒化物,窒化物(炭化チタン・窒化チタンなど),酸化物(酸化アルミニウムなど),ダイヤモンド,ダイヤモンドライクカーボンなどを,1 層又は多層に化学的又は物理的に被覆させたもの。
出典:JIS B 4053
超硬合金の呼び方・呼ばれ方
超硬合金と呼ばれるのが最も一般的ですが、呼ぶ人や用途によっても超硬質合金や超硬と違う呼ばれ方をします。
超硬質合金
超硬質合金とは、超硬合金の正式名称です。
産業分野では、超硬合金の方がより一般的です。論文などの学術的に使用されるときの用語としては、超硬質合金が正式名称であるため、多く使用されます。
超硬
超硬とは、超硬合金の略称です。
ドリルやチップ、エンドミルなど、切削工具の素材・材質として使われるときは、この略称である超硬がよく使用されます。
例えば、超硬工具は超硬合金素材で作られた切削工具全般を指す言葉となりますし、超硬ドリルや超硬チップなどの言葉も一般的です。
超硬合金の英語表記
超硬合金を英語で表記するとCemented Carbide(セメンテッド・カーバイド)となります。
Cementedは、硬結・硬く結束した意味となり、Carbideは、炭化物を意味します。
その他にもHartmetalle(ハートメタル)、hard metals(ハードメタル)と呼ばれることもあります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
超硬合金や超硬は、素材として一般的ではありますが、一般的となりすぎてひとまとめにされがちです。
複合材料であり、配合によってもいろいろな種類があることを覚えていただけたら嬉しいです。