
キー(Key)は軸とハブ(プーリー・ギア・スプロケット等)を機械的に結合し、トルクを伝達するための部品です。
キーを収めるために軸とハブに施す溝を「キー溝(Keyway)」と呼びます。標準化された寸法体系により選定・加工・交換が容易で、最も広く使用されている軸とハブの結合方式のひとつです。
本記事では、キー・キー溝の種類、用途、設計・選定のポイント、主要メーカーをわかりやすく解説します。
キー・キー溝とは(基礎知識)
キーは軸側とハブ側のキー溝に挿入され、回転方向のせん断力を負担してトルクを伝達します。
ハブの位置決めや滑り防止にも有効で、工作機械・搬送装置・ポンプ・減速機など幅広い産業機械で採用されています。
一般的な材質は機械構造用炭素鋼(例:S45C)で、耐食用途ではステンレス(SUS)も使われます。
キーの種類
- 平行キー(角キー):最も一般的。断面が長方形(または正方形)で、軸とハブのキー溝に挿入して使用。量産性と互換性に優れる。
- テーパキー(勾配キー):キーにテーパ(勾配)を持たせ、打ち込みで高い固定力を得る。高トルクや逆転衝撃の大きい用途に。
- ウッドラフキー(半月キー):半月形で、軸側の円弧溝に装着。小径軸や芯出し性が求められる用途に適する。
- 段付きキー・特殊形状キー:位置決め用の段付き、クランプ併用、スプライン代替など用途特化型も存在。
- 参考:キーレス結合(パワーロック等):摩擦締結によるキー不要方式。芯ずれ低減や応力集中の回避、メンテ性向上に有効。
主な用途
- モーター/減速機の出力軸とプーリー・ギア・スプロケットの結合
- コンベヤ駆動部、ポンプ・ブロワのカップリング接続部のトルク伝達
- 位置決めと空転防止(ハブのスリップ抑制)
設計・選定のポイント
- 寸法体系:軸径に対してキー幅・高さがJIS規格で標準化。カタログの軸径対応表から選定します。
- 許容トルク:キー断面のせん断応力・押し付け面圧(クラッシング)を確認。安全率を確保します。
- 加工精度:キー溝幅の公差、はめあい(H7、Js等の管理)がトルク伝達と組立性に直結。
- 材料・処理:一般はS45C、必要に応じて焼入れや表面処理。湿潤・食品等はSUS材を検討。
- 組立・保全:テーパキーは抜き取り工具・押しネジ穴の設計、平行キーは抜け止め(止めネジ)や嵌合長さの確保がポイント。
- 代替方式:頻繁な脱着・高精度芯出しが必要な場合は、キーレス締結具(パワーロック等)が有効です。
主なメーカー一覧(キー・キー溝関連/キーレス結合含む)
- 日之出スッピル株式会社(HINODE SUPPILL):キー材専業メーカー。JIS・ISO対応の平行キー・ウッドラフキーを豊富に展開。
公式サイトはこちら - 三興キー製作所(SANKO KEY):各種標準キー、テーパキー、長尺キー材などを製造。全国流通網を持つ。
公式サイトはこちら - 鍋屋バイテック会社(NBK):標準キーとキーレス締結具(パワーロック)を幅広く展開。
公式サイトはこちら - 三木プーリ(MIKI PULLEY):パワーロック・シャフトロックなどのキーレス締結具を多数ラインアップ。
公式サイトはこちら - ミスミグループ本社:平行キー・ウッドラフキー・キー材をEC短納期供給。加工サービスにも対応。
公式サイトはこちら - 片山チエン(KANA):スプロケット・動力伝達機器と合わせたキー・締結具提案が可能。
公式サイトはこちら - 椿本チエイン(TSUBAKI):キーレス締結具を中心に、駆動要素との一体提案を展開。
公式サイトはこちら
メーカー比較表
メーカー | 主力領域 | 強み | 想定用途 |
---|---|---|---|
日之出スッピル | キー材・平行キー | 専業メーカー・高品質・標準化 | 一般機械・量産設備 |
三興キー製作所 | 各種キー材・特注対応 | 豊富な在庫と流通ネットワーク | 保全交換・特寸対応 |
NBK | 標準キー・キーレス締結具 | 高精度・技術資料充実 | 装置一般・設計用途 |
三木プーリ | キーレス締結具 | 芯出し精度・メンテ性 | 高精度・高頻度分解 |
ミスミ | 標準キーEC・加工サービス | 短納期・カスタム対応 | FA・自動化装置 |
KANA | 動力伝達・スプロケット関連 | 互換性・一体提案 | コンベヤ・装置組込 |
椿本チエイン | キーレス締結具・駆動要素 | 信頼性・総合提案 | 産業機械・FA設備 |
購入先・販売サイト
Q&A(よくある質問)
Q. 軸径に対するキー寸法はどう決める?
A. メーカーの「軸径—キー寸法対応表」から選定します。トルクが大きい場合は嵌合長さ(キー長)を十分に確保し、面圧・せん断強度をチェックします。
Q. キー溝の加工精度はどの程度必要?
A. 伝達精度・寿命に関わるため、キー溝幅の公差管理が重要です。軸・ハブの同軸度や面粗さ、角部のR形状などもカタログ推奨値に合わせます。
Q. キーとキーレスの使い分けは?
A. 交換性・コスト重視なら標準キー、芯出し精度・振動・頻繁な着脱・応力集中の回避が重要な場合はキーレス締結具が有効です。装置仕様と保全方針で使い分けます。