
防音・遮音部品は、機械や設備から発生する騒音を抑制するための機能部材です。
吸音材・遮音パネル・防音カバー・制振シートなどの形で使用され、装置の静音化や作業環境の改善、安全基準の遵守に欠かせません。
工場、プラント、建屋、試験室など、あらゆる産業分野で導入されています。
防音・遮音部品とは(基礎知識)
防音部品は、機械の振動や空気伝播音を低減するために設置される要素部品です。
「吸音」「遮音」「制振」「防振」などの複合的な機能を持ち、装置からの音を吸収・反射・遮断することで周囲への騒音影響を抑えます。
- 吸音:音を内部に吸収して反射を減らす(ウレタンフォーム・グラスウールなど)
- 遮音:音の通過を防ぐ(鋼板・鉛シート・樹脂板など)
- 制振:振動を抑えて音の発生自体を防ぐ(制振シート・防振ゴムなど)
- 防振:振動伝達を抑制し、機械や床への影響を軽減(防振マウント)
防音・遮音の仕組み
音の発生メカニズムに応じて、吸音と遮音を組み合わせることが多くあります。
- モータ・コンプレッサなどの機械騒音には、筐体内部に吸音材を貼付。
- ダクト・配管の流体音には、外装に制振材・遮音シートを巻き付け。
- 工場全体の環境騒音には、防音パネルや吸音壁を設置。
これにより、作業環境基準(85dB以下など)への適合や、近隣環境への配慮が可能になります。
防音・遮音部品の種類
1. 吸音材
- ウレタンフォーム吸音材:軽量で加工しやすく、筐体内部に貼り付けやすい。
- グラスウール・ロックウール:高温環境にも対応。プラントや機械室で使用。
- メラミンフォーム:難燃性・高吸音性を持ち、電機・車両分野に使用。
2. 遮音材
- ビニール遮音シート:施工が容易で柔軟性が高い。
- 鉛シート:高遮音性だが重量がある。固定設備向け。
- 金属パネル型:鋼板と吸音層を一体化した構造。防音ボックスなどに使用。
3. 制振・防振材
- 制振シート:鋼板やパネルに貼付して共振を低減。
- 防振ゴム:機械の設置面に用い、振動伝達を遮断。
- 防音パネルユニット:防音壁・防音室構築用。吸音+遮音構造。
軽量パネル構造の違いと使い分け
軽量で扱いやすい樹脂系パネルには、構造が異なる代表格が存在します。設計目的に合わせて選定しましょう。
① 三層中空(サンドイッチ)構造:プラパール®(川上産業)
- 構造:上下2枚の樹脂シートの間に独立気泡層を形成した三層中空パネル(サンドイッチ構造)。
※ハニカム構造ではありません。 - 特長:軽量・防水・加工容易・低コスト。簡易防音(遮音)や断熱用途に好適。
- 用途:装置カバーの内板、間仕切り、筐体の簡易防音パネル、梱包・保護材。
② 樹脂ハニカム構造:TECCELL®(岐阜プラスチック工業)
- 構造:熱可塑性樹脂を連続成形した六角セルのハニカムコア。高剛性・軽量・寸法安定。
- 特長:セル内での音波拡散・反射抑制により、遮音性に加えて吸音・断熱にも寄与。構造材としても有効。
- 用途:防音壁・機械カバー・建材・車両内装・床パネルなど。
主な用途
- コンプレッサ・ブロワ・真空ポンプの防音カバー
- FA機器・測定装置の静音化
- 発電機・プラント設備の遮音壁
- 空調機・冷凍機の防音ボックス
- 制御盤・サーバラックの内部吸音
主なメーカー一覧
- 株式会社ニチアス(NICHIAS):吸音・遮音・断熱材の大手。プラント・発電・建築分野で実績豊富。
公式サイトはこちら - 積水化学工業株式会社(Sekisui):メラミンフォーム吸音材や遮音シートなど、樹脂系素材に強み。
公式サイトはこちら - ブリヂストン化工品ジャパン株式会社:防振・防音技術を複合展開。建機・FA設備向けに多数採用。
公式サイトはこちら - アキレス株式会社(Achilles):ウレタンフォーム系吸音材のトップメーカー。軽量・高吸音タイプを展開。
公式サイトはこちら - ダイキン工業株式会社:防音パネル・防音壁・防振材などをシステム的に提供。
公式サイトはこちら - 岐阜プラスチック工業株式会社:熱可塑性樹脂ハニカム材「TECCELL®」を展開。軽量・高剛性・リサイクル性を両立。
公式サイトはこちら - 川上産業株式会社:中空三層構造板「プラパール®」や気泡緩衝材「プチプチ®」を製造。軽量防音・断熱・梱包用途に広く採用。
公式サイトはこちら - ミスミグループ本社:吸音材・制振シート・防音ボードなどEC販売で即納対応。
公式サイトはこちら
メーカー比較表
メーカー | 主力製品 | 構造タイプ | 特徴 | 用途分野 |
---|---|---|---|---|
ニチアス | グラスウール・遮音パネル | 多孔・サンドイッチ | 高温対応・耐久性 | プラント・建築 |
積水化学 | メラミンフォーム・遮音シート | 発泡・シート | 軽量・難燃 | FA装置・住宅・車両 |
ブリヂストン | 防音・防振複合材 | 複合・制振 | 高減衰・信頼性 | 産業機械・建機 |
アキレス | ウレタンフォーム吸音材 | 多孔発泡 | 軽量・加工性高い | 筐体・装置 |
岐阜プラスチック | TECCELL® | 樹脂ハニカム | 軽量・高剛性・環境対応 | 建屋・装置カバー |
川上産業 | プラパール® | 三層中空(サンドイッチ) | 軽量・防水・低コスト | 内装・簡易防音 |
ダイキン工業 | 防音パネル・壁材 | サンドイッチ | 設備全体提案型 | 工場・発電設備 |
ミスミ | 吸音材・制振シート | 各種 | 即納・小ロット対応 | 装置設計・試作 |
購入先・販売サイト
Q&A(よくある質問)
Q. 吸音材と遮音材の違いは?
A. 吸音材は音を内部で吸収して反射を減らす材料、遮音材は音の通過を物理的に遮断する材料です。防音対策では両者を組み合わせることが重要です。
Q. ハニカムと三層中空(サンドイッチ)はどちらが防音に有利?
A. ハニカムは軽量高剛性で広帯域に有利、三層中空は簡易遮音・断熱と加工性・コストに優れます。必要性能(周波数帯、剛性、重量、コスト)で使い分けます。
Q. 屋外に設置する場合の注意点は?
A. 耐候性・防水性を確保する必要があります。金属サンドイッチ構造やPPハニカムパネル、表面シートの耐候グレードを推奨します。