
真空ポンプは、密閉容器内の空気やガスを吸引し、内部を減圧状態(真空)にする装置です。
工場の真空搬送ライン、分析機器、食品包装、半導体製造など幅広い分野で使用されています。
この記事では、真空ポンプの仕組み・種類・用途・代表メーカーをわかりやすく解説します。
真空ポンプとは?(基礎知識)
真空ポンプ(Vacuum Pump)は、容器内から気体を排出して圧力を下げ、真空状態を作り出す機械装置です。
ポンプの種類によって到達できる真空度や処理流量が異なります。
一般的には、圧力が1013 hPa(大気圧)から1 hPa程度の「低真空」、1 hPa以下の「高真空」までを扱います。
真空ポンプの構造と仕組み
真空ポンプは、密閉空間内の空気を吸い出して排出し、内部圧力を低下させる構造を持ちます。
主要構成は以下の通りです。
- 吸気口(インレット):容器や装置と接続する吸入口。
- 排気口(アウトレット):吸い出した空気を外部へ放出。
- ポンプ室:気体を圧縮・移送する空間。
- 駆動部:モーターまたは減速機で駆動。
- オイル・ベアリング:潤滑と密封を兼ねる(ドライ式はオイルレス構造)。
真空ポンプの種類
作動原理により、大きく「容積式」と「分子流式」に分類されます。
1. 容積式(低〜中真空用)
- ロータリーポンプ:ローターの回転で空気を圧縮・排出。一般工業用に最も多い。
- スクロールポンプ:渦巻形のスクロールで空気を閉じ込め排出。静音・オイルレス。
- ルーツポンプ:2枚または3枚ローターで搬送。中真空補助ポンプとして使用。
- ドライポンプ:オイルレス構造で、クリーンルーム用途に最適。
2. 分子流式(高〜超高真空用)
- ターボ分子ポンプ:羽根車の高速回転で分子を弾き出す。半導体・分析装置に使用。
- 拡散ポンプ:オイル蒸気の噴射流で分子を排出。高真空域をカバー。
- クライオポンプ:冷却面に分子を凝縮させて捕集。超高真空用。
特徴
- 容積式は構造が簡単でメンテナンス性が高い。
- 分子流式は高真空を得られるが、運転環境が限定される。
- オイル式は高性能だが定期メンテナンスが必要。
- ドライ式はクリーンで環境にやさしい。
用途
- 真空包装・脱気装置
- 分析機器(電子顕微鏡・質量分析装置)
- 半導体製造・成膜装置
- 真空搬送・吸着ハンドリング
- 冷却・乾燥工程
選定ポイント
- 到達真空度(Pa または Torr)
- 排気速度(L/min または m³/h)
- 運転時間・連続運転の有無
- オイルレス/オイル式の選択
- 騒音・振動・設置環境(屋内/屋外)
主なメーカーと特徴
株式会社ULVAC(アルバック)
真空技術の国内トップメーカー。産業用から研究用まで幅広く対応。
公式サイトはこちら
アトラスコプコ株式会社
ドライ式・スクリューポンプに強み。エネルギー効率に優れる。
公式サイトはこちら
オリオン機械株式会社
オイルレス真空ポンプ・コンプレッサを製造。食品・医療・研究用途に採用多数。
公式サイトはこちら
日立産機システム株式会社
ロータリー式・スクロール式など汎用真空ポンプを展開。信頼性が高い。
公式サイトはこちら
メーカー比較表
メーカー | 主力製品 | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|---|
ULVAC | ロータリー・ターボ分子ポンプ | 高真空対応・総合力 | 研究・半導体 |
アトラスコプコ | ドライスクリューポンプ | 省エネ・高効率 | FA・製造ライン |
オリオン機械 | オイルレスポンプ | 静音・クリーン | 食品・医療 |
日立産機システム | ロータリー・スクロール | 安定稼働・汎用性 | 一般産業 |
購入先・通販サイト
Q&A
Q. 真空ポンプの「到達真空度」とは?
A. ポンプが到達できる最低圧力値を示します。用途に応じて低真空(包装・搬送)〜高真空(半導体・研究)まで選定します。
Q. オイルレスポンプのメリットは?
A. クリーンでメンテナンス性が高く、食品・医療・研究など汚染を嫌う環境に適します。
Q. 長期運転で注意すべき点は?
A. フィルター詰まり、オイル劣化、ベアリング摩耗など。定期的な点検で性能を維持します。
関連記事