インパクトレンチの使い方と選び方｜ボルト・ナットを強力に締め付ける電動工具

自動車・バイクのホイールナットや、機械のボルト脱着を一気に済ませたいときに活躍するのがインパクトレンチです。

高トルクでボルト・ナットを素早く回せるため、手作業では大変な作業も短時間で完了します。

この記事では、インパクトレンチの仕組み・種類・使い方・選び方を、はじめて使う人にも分かりやすく解説します。

インパクトレンチとは？

インパクトレンチは、内部のハンマー機構によって打撃（インパクト）を加えながら回転トルクを伝える電動・エア工具です。

固着したボルト・ナットも強力な瞬間トルクで緩めたり締め付けたりできます。

主な用途

• 自動車・バイクのホイールナットの脱着
• 足回り・サスペンション部品のボルト作業
• 建設機械・農機・産業機械のボルト脱着
• 建築現場でのアンカーボルト締結

インパクトレンチの種類

インパクトレンチとトルクレンチの違い

インパクトレンチは「スピード重視の締付け・緩め工具」、トルクレンチは「締付けトルク管理用の精密工具」です。

• インパクトレンチ：素早く脱着するための工具。最終トルクは不正確になりやすい。
• トルクレンチ：規定トルクに合わせて本締めするための工具。

実務では、

「インパクトレンチで仮締め → トルクレンチで規定トルク本締め」

という組み合わせが基本です。

トルク管理については、関連記事のトルクレンチの使い方と選び方｜精密締付けの基本と管理方法も合わせて参照してください。

差込角とトルクの目安

インパクトレンチは、ソケットを取り付ける部分の差込角サイズと最大トルクで大まかな用途が決まります。

インパクトレンチの使い方

① 適切なインパクトソケットを使う

インパクトレンチにはインパクト対応ソケット（黒い強化タイプ）を使用します。

通常のクロムメッキソケットは割れる危険があるため、必ず専用品を使いましょう。

② 締め付け方向・回転方向を確認

本体の正逆転切り替えスイッチで、締める（時計回り）／緩める（反時計回り）を確認してから作業します。

③ ホイールナット作業の手順

1. まず十字レンチやラチェットで「手締め」してからインパクトを使う。
2. インパクトレンチで一気に締め込まず、「軽く当てる程度」にとどめる。
3. 車を降ろしたあと、トルクレンチで規定トルクで本締め。

④ 固着ボルトの緩め方

• 最初から全開パワーで当てず、短い時間で数回に分けて打撃する。
• 固着がひどい場合は浸透潤滑剤を併用。

インパクトレンチの選び方

① 必要トルクで選ぶ

目安として、乗用車ホイールナット用なら300〜400N・mクラスのモデルを選ぶと余裕があります。
トラックや商用車も扱う場合は、500N・m以上の高トルク機種が候補になります。

② 電源方式で選ぶ

• DIY・個人ガレージ： 充電式18Vクラスが扱いやすい。
• 作業時間が長い工場： エアインパクトやAC機が有利。

③ 重量・サイズ

パワーが強くても、重すぎると作業姿勢がきつくなります。

特に上向き作業が多い場合は、2kg前後の軽量モデルが扱いやすいです。

④ 打撃数・回転数

カタログに記載されている「打撃数（bpm）」や「回転数（rpm）」もチェックポイントです。

細かい打撃の方がコントロールしやすく、ナットをなめにくくなります。

おすすめのインパクトレンチ

インパクトレンチ使用時の注意点

• 締め付け過ぎ防止のため、必ずトルクレンチで最終確認を行う。
• インパクトソケット以外は使用しない（破損・飛散の危険）。
• 長時間連続で回し続けず、モーター・エアの負荷に注意。
• バッテリーは純正品・互換性確認済みのものを使用する。

関連記事

• トルクレンチの使い方と選び方｜精密締付けの基本と管理方法
• ソケットレンチの使い方と種類｜差込角・ラチェットの基礎知識

まとめ

インパクトレンチは、ボルト・ナットの脱着作業を大幅に効率化できる強力な電動工具です。

ただし、トルク管理精度はトルクレンチに劣るため、「スピード＝インパクト」「精度＝トルクレンチ」と役割を分けて使うのがポイントです。

用途に合ったトルク・差込角・電源方式のモデルを選び、インパクトソケットと組み合わせて安全に活用しましょう。