オイルミストとは、潤滑油や切削油などの油が微細な霧状(エアロゾル)になって空気中に浮遊している状態を指します。
工作機械・コンプレッサ・潤滑ユニットなどが稼働する工場では、オイルミストが発生しやすく、設備汚れ・ミスト発火・作業環境悪化などの原因になります。
この記事では、オイルミストの発生原理、発生しやすい設備、工場への影響、対策方法をわかりやすく解説します。
オイルミストとは?
オイルミストは、油滴の粒径がおおよそ1〜10μm程度の微粒子となり、空気中に浮遊している状態です。
- 肉眼では「白いもや」「煙」のように見えることが多い
- におい・ベタつき・油煙として作業者が感じることも多い
- 換気不足の工場では、天井・壁・盤内がベタベタに汚れる原因になる
オイルミストの主な発生源
オイルミストは、油が高温・高速・衝突・せん断を受けることで霧化して発生します。代表的な発生源は次の通りです。
- NC旋盤・マシニングセンタなどの切削油(クーラント)
- 潤滑ユニット・オイルミスト供給装置
- 高速回転するギヤ・ベアリング部からの飛散油
- コンプレッサ吐出側のオイルキャリーオーバー
発生メカニズム(原理)
オイルミストは、以下のような物理現象によって発生します。
- 高速回転する工具・ギヤによる油の飛散・微粒化
- ノズルからの高圧噴霧による霧化
- 高温部での油の熱分解・蒸発と再凝縮
切削液や潤滑油が「薄い膜」や「大きな液滴」として存在しているときに比べ、微粒子になるほど空気中に長く滞留しやすくなります。
オイルミストが工場設備に与える影響
1. 設備汚れ・故障リスク
- 制御盤・配電盤の内部にミストが侵入 → 部品・端子に油が付着
- センサー・カメラ・ライトのレンズが曇る
- 集塵機フィルタの目詰まりを早める
特に電気機器の絶縁低下・接点不良は、トラブルにつながります。
2. 作業環境・安全面への影響
- 床が滑りやすくなり、転倒事故のリスク増大
- 作業者の衣服・肌・呼吸器への付着
- 高濃度の油煙は、長期的に健康リスクとなる可能性
3. 発火・火災リスク
オイルミストは、条件がそろうとミスト爆発・発火の可能性があります。
- 高温部品やスパーク源が存在する工程
- 換気不良の密閉空間
- 可燃性の切削油・潤滑油を使用している設備
オイルミスト対策の基本
1. 発生源での対策
- 加工機のカバー・エンクロージャの適正化
- 切削油の噴射圧・流量の見直し
- オイルミスト供給量の適正化(過剰ミストを避ける)
2. 集塵機・ミストコレクターの設置
オイルミストが多い場合は、専用のミストコレクター・集塵機が効果的です。
- 機械カバー内部からダクトを引き、ミストコレクターへ吸引
- フィルタ方式(メッシュ・ファイバー・静電式など)を用途に応じて選定
- フィルタ交換・清掃周期の管理が重要
3. 潤滑ユニット・オイルミスト供給の最適化
- 「とりあえず多めに出す」設定を見直す
- 給油量を数値管理し、必要量を把握
- オイルミスト供給装置や潤滑ユニットのメンテナンス
4. 定期清掃・メンテナンス
- 天井・壁・照明・ダクトの油汚れを定期清掃
- 床面の油拭き・防滑マットの活用
- 制御盤内の点検・清掃(必要に応じてエアブローと拭き取り)
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まとめ
オイルミストは、潤滑油や切削油が微粒子化して空気中に浮遊する現象で、工場設備や作業環境にさまざまな悪影響を与えます。
- 発生源は、切削加工機・潤滑ユニット・コンプレッサなど
- 設備汚れ・絶縁低下・滑り事故・健康リスク・発火リスクにつながる
- 発生源での抑制、ミストコレクターの設置、給油量の最適化、定期清掃が重要
オイルミスト対策は、「設備寿命の延長」「工場の見える化・美観」「安全衛生」のすべてに直結するため、計画的な対策・投資を検討する価値があります。












