冷却塔(クーリングタワー)とは、水を蒸発潜熱を利用して冷却する設備で、空調設備・チラー・工場のプロセス冷却など、多くの産業で使用されています。
「水を冷やす装置」ですが、冷凍機(冷媒式)とは仕組みが異なり、外気と水を接触させることで効率よく冷却できるのが特徴です。
この記事では、冷却塔の仕組み、種類、運用ポイント、メンテナンスの注意点などをわかりやすく解説します。
冷却塔(クーリングタワー)とは?
冷却塔は、循環水を外気と直接または間接的に接触させ、蒸発による気化熱で冷却する装置です。
主な用途:
- チラー(冷却水循環装置)の熱交換
- 空調設備(ビルマル・ヒートポンプ)
- 工場プロセス冷却(射出成形・食品・化学など)
- 発電プラントの復水器冷却
冷却塔は、建物・工場の「排熱調整」を担う重要なインフラ設備です。
冷却塔の冷却原理(気化熱)
冷却塔の冷却は、以下の2つの作用で成り立っています。
- ① 気化熱:水が蒸発するとき周囲の熱を奪う
- ② 顕熱交換:空気との温度差で熱が移動する
冷却塔内部では、散水された水が充填材(フィル)を流れ落ち、上昇する外気と接触することで蒸発します。
このとき蒸発した水が熱を奪い、残った水が冷却されます。
冷却塔の主な種類
① 開放式冷却塔(オープンタイプ)
循環水が外気と直接接触する最も一般的な方式。
特徴:
- 構造がシンプル
- 冷却効率が高い
- 水質管理が重要(スケール・スライム・腐食)
② 密閉式冷却塔(クローズドタイプ)
配管内の循環水を外気に直接触れさせず、コイルを介して冷却。
特徴:
- 配管腐食が少ない
- 水質管理の負荷を軽減
- 初期コストはやや高い
③ ハイブリッド冷却塔
開放式+密閉式の中間。水質と効率のバランスを重視する現場向け。
冷却塔の構成部品
| 部品名 | 役割 |
|---|---|
| ファン | 空気を塔内に吸引・排出する |
| フィル(充填材) | 水と空気の接触面積を増やす |
| 散水装置 | 水を均一に散水 |
| 受水槽 | 冷却された水を溜めて循環 |
| ドリフトエリミネータ | 水滴飛散を防ぎ外部への水ロスを減らす |
メンテナンスのポイント
① 水質管理(最重要)
冷却塔は外気に触れるため、汚れ・藻・スケールが発生しやすい設備です。
管理項目:
- スライム(微生物)の除去
- スケール沈着(カルシウムなど)の防止
- 腐食抑制(配管・ポンプ保護)
- レジオネラ菌の抑制
必要に応じて薬注装置(水処理剤)を併用します。
② ファン・モーター点検
- ベルトテンション確認
- 軸受グリスアップ
- 振動・異音チェック
③ フィル(充填材)の清掃
汚れが蓄積すると冷却効率が大幅に低下します。
④ ドリフトエリミネータの点検
破損すると水滴が外部に飛散 → 周囲の錆や機器故障の原因に。
⑤ 季節ごとの運転確認
- 夏:最大負荷の性能確認
- 冬:凍結防止策(ヒーター・循環運転)
冷却塔のよくあるトラブル例
- 水温が下がらない: フィル詰まり・風量不足
- 異音・振動: ファンベルトの劣化
- 水漏れ: 配管腐食・パッキン劣化
- スケール付着: 水処理不良
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まとめ
冷却塔は、工場・空調設備の排熱を効率よく冷却するための重要設備です。
- 蒸発潜熱を利用した高効率な冷却が可能
- 開放式・密閉式・ハイブリッドの3種がある
- 水質管理・フィル清掃・ファン点検が最重要
- 性能低下は設備全体の負荷増加につながる
適切な運用とメンテナンスにより、冷却効率の維持・省エネ・設備寿命の向上が期待できます。












