トルク変動(Torque Fluctuation)とは、**回転機械が発生するトルクが時間とともに周期的・不規則に変動する現象**を指します。
振動、騒音、回転ムラ、位置決め誤差など、多くの機械トラブルの原因になるため、モータ制御・回転機・減速機設計では必ず考慮すべき概念です。
この記事では、トルク変動の原因、影響、抑制方法をわかりやすく解説します。
トルク変動とは?
トルク変動とは、
理想的には一定であるはずのトルクが、周期的あるいはランダムに変動してしまう現象
のことです。
機械要素の特性、回転ムラ、負荷変動、モータ制御など多くの要因で発生します。
トルク変動が起きる主な原因
① モータ固有の脈動(コギングトルク)
永久磁石同期モータやブラシレスDCモータで発生。
② ギアの噛み合い変動
- 歯面誤差
- ピッチ誤差
- バックラッシ
- クラウニング不足
が原因でトルクが周期変動。
③ ベルト・チェーンの張力変動
張り過ぎ・緩みがあると負荷が脈動。
④ 負荷の周期変動
往復運動機構や偏心負荷で発生。
⑤ 回転ムラ(速度変動)
慣性不足・制御ゲインの不適正など。
⑥ 機械摩擦の変動
潤滑不足や摩耗で摩擦トルクが変動。
⑦ 電源電圧の不安定
モータが瞬時に高・低トルクを発生。
トルク変動が引き起こす問題
① 振動・騒音の増大
ギア・ベルト・軸受の異音の原因になる。
② 位置決め精度の低下
サーボ系では最も問題となる要因。
③ 装置の寿命低下
- 歯車疲労
- 軸受摩耗
- カップリング損傷
などが加速。
④ トルク過負荷・停止異常
変動が大きいとインバータがエラー停止。
⑤ 回転ムラによる製品品質低下
フィーダ、巻き取り、加工機などで発生。
トルク変動の評価方法
- トルクセンサによる直接測定
- 回転数(速度波形)からの推定
- 振動解析(FFT)による間接評価
- 電流波形(モータ電流)による推測
特にモータ電流の変動は、トルク変動と強い相関があります。
トルク変動を低減する方法
① ギアの精度向上
- 高精度研削
- クラウニング
- バックラッシ調整
② 慣性の増加(フライホイール追加)
回転ムラを吸収しやすくなる。
③ 高応答サーボの採用
速度変動を減らし、トルクを安定化。
④ ベルト張力の適正化
テンショナーで脈動を抑える。
⑤ 潤滑状態の改善
摩擦係数の変動を最小限に。
⑥ モータ制御パラメータの最適化
・ゲイン調整
・トルクリップル補償
・フィルタリング
⑦ 駆動系のガタ(バックラッシュ)を減らす
遊び量が大きいほどトルクが暴れやすい。
トルク変動が問題となる典型的な装置
- 搬送コンベア
- 巻き出し・巻き取り装置
- 減速機(ギアボックス)
- ロボット関節
- 押出機・プレス機
- スピンドルモータ
位置決め精度が重要な装置ほど深刻になります。
関連記事
関連書籍
まとめ
トルク変動は、モータ・ギア・ベルトなどの駆動系で生じるトルクのムラであり、多くのトラブルの原因となります。
- 振動・騒音・位置ズレの原因
- ギア精度・負荷変動・制御不良が主な要因
- 高応答サーボや慣性付加で低減可能
- 摩擦・バックラッシ管理も重要
装置の信頼性や精度向上のためには、トルク変動の理解と対策が必須です。












