転がり摩擦と滑り摩擦は、**摩擦の種類を理解する上で最も基本となる概念**です。
機械設計、設備メンテナンス、ベアリング選定、摺動部品の摩耗・寿命予測など、あらゆる現場で必要となる知識です。
この記事では、転がり摩擦と滑り摩擦の違い、特徴、使い分け、機械要素における応用をわかりやすく解説します。
転がり摩擦とは?
転がり摩擦とは、
物体が回転しながら移動するときに発生する摩擦
のことです。
代表例:
- ボールベアリングの玉が転がるとき
- ローラー搬送のローラーが回転するとき
- キャスターが床を転がるとき
特徴:
- 摩擦係数が非常に小さい(約0.001〜0.01)
- 効率が高く、摩耗が少ない
- 高速回転や長寿命用途に向く
滑り摩擦とは?
滑り摩擦は、
物体が接触面を滑って相対運動することで発生する摩擦
のことです。
代表例:
- 摺動案内(スライドガイド)
- プレーンベアリング(金属軸受)
- ボルト接触部
特徴:
- 摩擦係数が大きい(約0.1〜0.3)
- 摩耗が発生しやすい
- 低速・高荷重用途に適する
転がり摩擦と滑り摩擦の違い
| 項目 | 転がり摩擦 | 滑り摩擦 |
|---|---|---|
| 摩擦係数 | 非常に小さい | 大きい |
| 摩耗 | 少ない | 発生しやすい |
| エネルギー損失 | 小さい | 大きい |
| 速度範囲 | 高速に適する | 低〜中速に適する |
| 荷重 | 過大荷重は苦手 | 高荷重に強い |
なぜ摩擦係数に差が出るのか?
① 転がりは“点接触”に近い
接触面積が小さく、摩擦抵抗が低い。
② 滑りは“面接触”に近い
摩擦面が大きく、抵抗も大きくなる。
③ 接触の性質が異なる
- 転がり → 弹性変形・微小転がり変形
- 滑り → 材料同士が擦れ合うことで抵抗増大
どちらを選べばよいのか?(機械要素の使い分け)
転がり摩擦が適する場合
- 高速回転の軸(スピンドル、モータ)
- 省エネルギーが重要な設備
- 摩耗を減らしたい装置
→ ボールベアリング、ローラーベアリングが主役。
滑り摩擦が適する場合
- 高荷重・衝撃荷重がかかる
- 回転速度が低い
- 高温など、転がり軸受が使えない環境
→ ブッシュ、メタル軸受、摺動ガイドなどが採用される。
摩擦と潤滑の関係
転がり摩擦でも潤滑は必要
油膜が薄くなると滑りが発生し摩耗が増加。
滑り摩擦では潤滑が寿命を決める
境界潤滑・混合潤滑・流体潤滑の状態管理が重要。
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まとめ
転がり摩擦と滑り摩擦は、機械要素の選定・設計・寿命予測に欠かせない基礎知識です。
- 転がり摩擦は摩擦係数が小さく高速回転に適する
- 滑り摩擦は高荷重・低速用途に適する
- 潤滑状態が摩耗と寿命を大きく左右する
正しい摩擦の理解は、設備の信頼性向上と保全効率化につながります。












