電動機(モーター)の回転数は、電源周波数(Hz)によって決まります。
日本では地域によって「50Hz」と「60Hz」が混在しているため、設備移設や輸入機械の導入時には、モーター回転数の違いが大きな問題になることがあります。
この記事では、回転数と周波数の関係、同期速度の計算式、50Hzと60Hzで何が変わるのかをわかりやすく解説します。
回転数と周波数の基本関係
三相誘導モーターの回転数(同期速度)は、次の式で決まります。
同期速度(min⁻¹)= 120 × 周波数(Hz) ÷ 極数
例:4極モーターの場合
- 50Hz:1500 min⁻¹
- 60Hz:1800 min⁻¹
実際の誘導モーターは“すべり”があるため、同期速度より少し遅い値で回転します。
50Hzと60Hzの違い(4極モーターの場合)
| 項目 | 50Hz | 60Hz |
|---|---|---|
| 同期速度 | 1500 min⁻¹ | 1800 min⁻¹ |
| 実回転数 | 約1430〜1480 | 約1720〜1760 |
| 回転トルク | やや大きい | やや小さい |
| 発熱 | 低い | 高くなりやすい |
60Hzのほうが回転数が高くなるため、同じ機械で以下の変化が起きます:
- ポンプ → 流量が増える(最大30%ほど増加)
- ファン → 風量・静圧が増える
- コンベア → 搬送速度が速くなる
- 工作機械 → 主軸回転数が上昇
極数による回転数の比較
| 極数 | 50Hz | 60Hz |
|---|---|---|
| 2極 | 3000 | 3600 |
| 4極 | 1500 | 1800 |
| 6極 | 1000 | 1200 |
| 8極 | 750 | 900 |
極数が多いほど回転数は低くなります。
周波数が変わると何が起きる?
① 機械性能の変化
回転数が上がるほど
- ポンプ → 流量・揚程が上がる
- ファン → 風量・圧力が上がる
- コンベア → 速度上昇
仕様を超えると、過負荷・騒音・振動の増加につながることがあります。
② 電流値・発熱の変化
60Hzではモーター電流が増える傾向があり、結果的に発熱が大きくなります。
③ 機器寿命への影響
軸受・シールなどの回転部品は、回転数が高いほど摩耗が増加します。
④ 海外製機械の注意点
60Hz専用機を50Hz地域で使用すると、以下のような問題が起こることがあります。
- 回転数低下 → 能力不足
- トルク不足 → 起動不可
- 過負荷 → 異常停止
周波数の違いを補正する方法
① インバータを使用する
最も一般的で確実な方法です。
- 50Hz地域でも60Hz相当の速度に調整可能
- 設備移設時の“周波数差問題”を解決
② モーターを両周波数対応品に交換
工場では「50/60Hz兼用モーター」が一般的です。
③ プーリー比・ギヤ比の変更
回転機械に多い方法。
装置の構造によって対応可否が異なります。
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まとめ
回転数は、電源周波数とモーターの極数で決まります。
- 50Hz → 回転数は低め
- 60Hz → 回転数は高め
- ポンプ・ファンの流量が大きく変わる
- 海外設備の移設時は要注意
周波数差による問題は、インバータ制御でほぼ解決できます。












