
クラッチは回転軸どうしの「接続/切り離し」を行い、ブレーキは「停止/保持」や減速を行う駆動制御要素です。
電磁式・機械式・油圧/空圧式など方式は多様で、FA装置、搬送機、包装・印刷機、工作機械、自動車・産業車両まで幅広い分野で使用されます。
本記事では、クラッチ・ブレーキの種類、用途、構造、主要メーカーをわかりやすく整理します。
クラッチ・ブレーキとは(基礎知識)
クラッチは入力軸と出力軸の連結/切離を制御してトルクを伝達し、ブレーキは回転体に制動トルクを与えて停止・保持します。
電磁石で作動する電磁クラッチ・電磁ブレーキが産業用途で広く普及しており、応答性や制御性に優れます。
サーボ/インバータ制御が一般化した現在でも、機械側の安全保持/非常停止、フリーホイール機能、正逆運転での機械的保護などで不可欠です。
種類(方式別)
- 電磁クラッチ・電磁ブレーキ:通電で吸引して結合・制動。パウダー式、ソレノイド式、スプリングアプライ(通電解除)など。
- エア式(空圧)/油圧式:高トルク・高頻度用途。湿式多板クラッチ/ブレーキで発熱・摩耗に強い。
- 機械式:多板・歯形(ドッグ)クラッチ、遠心クラッチ、ワンウェイクラッチ(バックストップ)。
- 安全ブレーキ(保持ブレーキ):スプリングアプライ・通電解除型。サーボモータの軸保持に使用。
- ヒステリシス/パウダー制御:滑りを利用して張力制御・ソフトスタートに適する。
主な用途
- コンベヤ・包装・印刷機の区分駆動、張力制御、位置決め補助
- ロボット・サーボ軸の落下防止(保持ブレーキ)と非常停止
- プレス機・巻取り機・クラッチブレーキユニットによるON/OFF制御
- 減速機・駆動系の過負荷保護、片方向伝達(ワンウェイ)
構造と選定のポイント
- 定格トルク:必要トルクに対し安全率を確保。動作回数・温度上昇・許容エネルギ計算を確認。
- 応答性・制御性:立上り/解放時間、残留トルク、滑り特性(パウダー/ヒステリシス)を用途に合わせる。
- 発熱・寿命:断続回数や制動エネルギによる温度上昇を見込み、放熱設計・湿式化・強制冷却を検討。
- 取付形状:シャフト直結、フランジ、中空シャフト、プーリ一体、ユニット化(モータ+ブレーキ)など。
- 電源・制御:DC24VやAC用整流器、通電方向、サージ対策。通電保持 or 通電解除の機能安全観点も重要。
- 環境条件:粉塵・油ミスト・高温。防塵カバー、保護等級(IP)、摩擦材の耐環境性を確認。
主なメーカー一覧
- 小倉クラッチ株式会社(OGURA CLUTCH):電磁クラッチ・ブレーキの国内大手。パウダー式や張力制御に強み。
公式サイトはこちら - 三木プーリ株式会社(MIKI PULLEY):電磁クラッチ・ブレーキ、トルクリミッタ、カップリングまで総合展開。
公式サイトはこちら - シンフォニアテクノロジー株式会社(SINFONIA):電磁クラッチ・ブレーキ、パウダー式、テンション制御ユニット。
公式サイトはこちら - オリエンタルモーター株式会社:モータ一体型保持ブレーキ、電磁ブレーキ付減速機など。
公式サイトはこちら - mayr(マイヤー):ROBA-stop等の安全ブレーキで世界的実績。
公式サイトはこちら - KEB Automation:サーボ保持ブレーキ・産業用電磁ブレーキ。
公式サイトはこちら - Warner Electric(Altra):電磁クラッチ・ブレーキのグローバルブランド。
公式サイトはこちら - ミスミグループ本社:各社規格のクラッチ・ブレーキ・整流器をEC短納期で供給。
公式サイトはこちら
メーカー比較表
メーカー | 主力領域 | 強み | 想定用途 |
---|---|---|---|
小倉クラッチ | 電磁・パウダー式 | 張力制御・応答性 | 印刷・包装・巻取り |
三木プーリ | 電磁CB・トルクリミッタ | 総合提案・互換性 | FA・一般産業 |
シンフォニア | 電磁・パウダー・制御 | テンション制御 | 搬送・フィルムライン |
オリエンタルモーター | 保持ブレーキ一体 | 小型・使い勝手 | 小型装置・搬送 |
mayr | 安全ブレーキ | 機能安全・信頼性 | ロボット・昇降 |
KEB | 電磁・サーボ用 | 静音・長寿命 | サーボ軸保持 |
Warner Electric | 電磁CB | グローバル供給 | 一般産業・輸出 |
ミスミ | EC標準・整流器 | 短納期・一括調達 | 試作~量産 |
購入先・販売サイト
Q&A(よくある質問)
Q. サーボモータの保持ブレーキはいつ必要?
A. 通電が切れても荷重を保持する必要がある垂直軸・安全要求の高い軸では必須です。スプリングアプライ(通電解除)型を選定します。
Q. 高頻度ON/OFFで発熱が大きい。
A. 湿式多板やパウダー式、放熱フィン付、通電デューティ制御、直流化+サージ対策などで温度上昇を抑えます。許容エネルギ計算の見直しも有効です。
Q. クリーン環境や食品用途では?
A. 粉塵発生が少ない電磁式や湿式を選び、封止・耐食仕様(SUS・表面処理)と食品グレードの潤滑材を選択します。